「銀巴里」の元マネージャーの松浦さんから



古賀力さんの店「ブン」が なくなると聞いた



古賀さんは 私が始めて「銀巴里」で唄ったとき



トリをつとめられた シャンソン界の重鎮だ



重鎮というか  言葉の達人



たくさんのシャンソンを日本語にされた



とにかく 古賀さんは 歌手というより文学者のようで



私のように チンピラなシャンソン歌手には



敷居が高い



(このあたりのことは エッセイでも書いているのだけど)




だから 最後に古賀さんのお役にたてることといったら



知人のメディアのかたに このことを伝えること




良き時代の 良き歌を 守ってきた 良き場所が



今なくなろうとしていると





昨日は週刊「新潮」のかたが取材に見えた



十年ほど前に 「一人から千人へ」という記事を



書いてくれた記者のかただ


(一人しかいない場所で歌っていたクミコという歌手が

今 千人のホールで唄っているという記事)




十人も入れば一杯な店で



私は一曲「先生のオルガン」を 唄わせていただいた



お客さまが 間奏で ラララと唱和してくれる



みんなが 楽しそうに口をあけて唄っているところが



うまく写真に収まっていればいいなあ




カメラマンのかたは その大きなカラダをよじるように



脚立にのぼり 良きところを 狙う




「皆さんが 誰一人欠けることなくきちんと写るように お願いしますね」



その圧力に 汗だくになっている




さてさて  どんなふうに撮れたことか




古賀さんと 奥さまの芳賀さんは



いつものように 美しい




27才で お会いしてから30年




この30年の間に 得たもの 失くしたもの


出会ったひと  いなくなった人




「考える暇もなく時はすぎてゆく」


芳賀さんが 歌われるシャンソンに


涙が つつと つたう





ほんとに 考える暇もなく時はすぎてゆくのだ




「ブン」は シャルル・トレネの曲で


ブンブンときもちの良い有り様をうたっているものです


思わずブンブンと口をついて出るって感じで


それを店名にした古賀さんです


赤坂見附からすぐ 一ツ木通り


お不動さまの鳥居の前の 通りを挟んだところ


1968年から 今年で44年


壁に いろんな人のサインがあります


貴重なものだけど 残せません


いろんな人のポスターもあります


いとんな人の いろんな時間が いろんなことを


話しかけてきます


ぼろぼろに崩れかけた グレコのポスターのはじっこが


「いいのよ 時はこうして過ぎていくんだから」と


いっているようです