先日から、ニュースで大きく取り上げられている、フランクフルト税関での楽器没収のお話。
堀米先生も、コンクール等で面識のある先生でしたし、有希ちゃんも数年来のお友達。
お二人の気持ちを考えると、いたたまれない気持ちでおりました。
この一連のニュースを見守り、そして事の顛末を聞いてもまだ、これが自分が暮らしたあの国で起こった事なのか、と受け入れる事が出来ず・・・・・。
皆様のご想像通り、ドイツはルールが全ての国で、ルールさえ守れば、私は一度も理不尽な思いをせずに、5年間という長い時間をあの国で過ごす事が出来ました。
(例えば、パリなどではとても労力がいると言われている学生ビザの取得も、書類さえ揃えれば、すぐに取得する事が出来たり)
それは、学生という守られた立場であった為か、現在の欧州危機の起こる前であった為かどうかは、分かりかねますが、それでも、今回の騒動には唖然、愕然。
私自身も、10代の頃に1度、アムステルダムの税関で1日、楽器を没収された事があります。
あの時は、自分の身に何が起こっているのか、そして何が問題なのかが全く分からず、キョトン
段々と腹がたってきたので、通されて別室でカルメン幻想曲を弾いても、職員に「ブラボー!」と言われるだけで、事態は好転せず
空港から当時の先生で、アムステルダム・コンセルトヘボーの伝説的なコンサートマスターでおられたHerman Krebbers 先生にお電話をしたところ「 なんとかするから、今日はとりあえずホテルに戻りなさい」との事だったので、泣く泣くホテルに戻る事に・・・・。
あの1日の、恐怖、心細さといったら、まるで自分の身体の一部が切り取られたような気分でした。
翌日に税関から電話があり、「問題がないので、取りにくる様に」との事で、事なきを得ましたが、それでも、一日、温度や湿度の管理がなされていないであろう、部屋にヴァイオリンを置かれた事が悲しくて、悔しくて。
その時は楽器の転売目的の恐れがある、との事での没収でしたので、それ以来、楽器の領収書、そしてこの楽器が私以外が演奏する事はない、と一筆書いて頂いた紙をいつも持ち歩いておりました。
もう1度はパリの税関で引っかかった事があるのですが、その時は別室で待つ様に言われたものの、待てど暮らせど誰も来ない(30分以上!さすがフランス)ので、勝手に撤収させて頂きましたが・・・・
今回の件で、私達音楽家だけが、特別扱いされるべきではない、とお叱りの声もあったとお聞きしております。
これは、あくまでも私個人の意見ですが。。。。
音楽家が特別、崇高な職業だとは思っておりませんが、音楽は崇高なものだし、名器を持つという事は歴史を背負うという事だと思っております。
今回のニュースで、世界中の多くの音楽家が慌てふためき、私自身も自分の税金に対しての無知さに愕然と致しました。
12月、そして1月に渡独する予定があるので、しっかりと書類を揃え、お参りに行き無事に出入国を出来る事を祈りつつ、自分のヴァイオリンと共に、充実した時間を過ごしてまいりたい、と思っております