というわけで、山本譲司さんのこの本を図書館で借りて読んでみました。
累犯障がい者のことを考える際には必読の本です。
一部、引用します。

山本譲司『獄窓記』(ポプラ社、2003.12)

 

そこは「塀の中の掃き溜め」と言われるところだった。汚物にまみれながら、獄窓から望む勇壮なる那須連山に、幾重にも思いを馳せる。事件への悔悟、残してきた家族への思慕、恩人への弔意、人生への懊悩。そして至ったある決意とは。国会で見えなかったこと。刑務所で見えたこと。秘書給与事件で実刑判決を受けた元衆議院議員が陥った永田町の甘い罠と獄中の真実を描く。

獄窓記
□序 章 
□第1章 秘書給与詐取事件
■第2章 新米受刑者として
 □分類面接
 □手紙
 ■妻の面会
 □移送日決定
 □黒羽刑務所へ
 □初出役の日
 □短気は損気
 □受刑生活における目標
 □斯くして配役工場へ
□第3章 塀の中の掃き溜め
□第4章 出所までの日々
□終 章 
□あとがき


第2章 新米受刑者として

妻の面会

真由美様へ
私が家を離れて以来、この4日間というもの、連日、記録的な猛暑が続いていますね。そんな中でも貴女は、引越しの準備や龍司の育児に追われ、さぞかし、大変な毎日を送っているのではないかと推察します。先ほど届いた貴女からの手紙を読み、私は、敵前逃亡をしたような後ろめたさを感じてしまいました。本当に、申し訳なく思っています。
(中略)
なお、九州の両親や名古屋の姉に、私の現在の状況について、「心身ともに安定していて、元気でやっているようだ」と、報告しておいていただければと思います。同じように、お義父さん、お義母さんにもよろしくお伝えください。
それでは、また。貴女と龍司に会える日を楽しみにしています。

六月二十八日
 譲司より



 

この手紙を出した5日後に、妻が面会にやって来た。
面会の際、収容者は、面会室が空くまでの間、待合室での待機を命じられる。待合室といっても、電話ボックスほどの広さに過ぎず、室内には照明もない。狭くて暗い空間に閉じ込められているという圧迫感があり、閉所恐怖症の人間には、耐え難い場所かもしれない。
私は、その小部屋で呼び出しを待つ間、面会時に妻に伝えなくてはならない事柄を頭の中で整理していた。限られた時間内に、少しでも多くのことを話したい。そう考えれば考えるほど、頭の中が攪拌され、持ち出す話の優先順位が定まらない。20分ほど待たされた後だった。向かいの面会室のドアが開く音がした。それと同時に、叫ぶような女性の声が聞こえてきた。
「お父さん、辛抱してがんばって。体にだけは気を付けてね」
面会室から出てきた収容者の足音は、すぐに、私の耳から遠退いていった。
「さあ、面会だ」
面会立ち会い係の看守によって、小部屋のドアが開けられ、私は、面会室の前に立たされた。
「奥さんと子供に間違いないか確認して」
看守は、そう言いながら、入口ドア上部にある覗き穴の扉を開いた。
縦5センチ横15センチほどの小窓から部屋の中を窺うと、面会室を仕切るアクリル板の向こうに、妻が腰掛けていた。妻の膝の上には、子供の姿があった。
「間違いありません」
「じゃあ、中に入って」
私は、囚人服に坊主頭という自分の姿を思い出し、その恥辱感から、一瞬、部屋に入ることを躊躇した。
「さあ、早く」
看守が入室を促す。

(つづく)


解説

こうして山本譲司氏は、妻子との待望の面会に臨みます。

獅子風蓮