寮美千子さんは、「奈良監獄物語」という絵本も出しています。

 

 


絵本ですから、分かりやすいことばで、「奈良監獄」を主人公にして話がすすみます。

すてきな絵本ですが、文章のみ紹介したいと思います。


目次

□坂の上の赤煉瓦
□美しい刑務所
□明治五大監獄
■黒船来航と不平等条約
□ギス監から近代的監獄へ
□囚人たちが積んだ赤煉瓦
□五翼放射状舎房
□暗い時代
□阿修羅さまたちの疎開
□若草理容室
□花火
□監獄法の改正
□やさしさを響かせる楽器
□取り壊しの危機
□町の人々の願い
□喜びと悲しみ
□別れの演奏会
□未来への船出
資料編
・奈良監獄建築配置図
・明治五大監獄
・旧奈良監獄の歴史


黒船来航と不平等条約

「明治五大監獄」が生まれるきっかけは、江戸時代の終わり、
浦賀にやってきたペリーの黒船艦隊にまでさかのぼる。

「泰平の眠りを覚ます上喜撰たった四はいで夜も寝られず」

西洋諸国に開国を迫られた日本は、
とうとう押しきられ、開国せざるをえなくなった。
そのとき結んだ「安政五ヶ国条約」は、
大きな力の差から生まれた、不平等な条約だった。
そのひとつが、領事裁判権だ。
日本で罪を犯した外国人を、日本の法廷で裁くことができないというものだ。

「このままでは、日本は西洋の植民地にされてしまう」
倒幕運動が起き、激動のなか、江戸幕府は滅びる。
天皇が君臨する「大日本帝国」が誕生した。
歴史の大転換、明治時代の始まりだ。

生まれたばかりの大日本帝国は、西洋に追いつこうと必死だった。
「士農工商」の身分が廃止され、さむらいたちはチョンマゲを切らされた。
鉄道が敷かれ、町角にはガス灯がともされた。
鹿鳴館では、夜な夜な舞踏会が開かれ、
庶民も洋服を着て、牛鍋を食べるようになった。

憲法が整えられ、警察と軍隊が組織された。
外国人を呼んで大学の先生になってもらい、
優秀な学生たちを海外に留学させた。
「富国強兵」と「殖産興業」のスローガンが町に躍る。
遅れたアジアから脱して、
欧米列強と肩を並べられる文明国になりたい。
「脱亜入欧」の、涙ぐましいまでの努力だった。
文明開化の大波が押しよせ、
古きよき江戸の面影は、潮が引くように消えていった。

 



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獅子風蓮