少しづつ、現代数学を勉強してみることにしました。

まずは、この本を読んでみました。

結城浩『数学ガール』(ソフトバンククリエイティブ、2007.06)

 

(目次)
第1章 数列とパターン
第2章 数式という名のラブレター
第3章 ωのワルツ
第4章 フィボナッチ数列と母関数
第5章 相加相乗平均の関係
第6章 ミルカさんの隣で
第7章 コンボリューション
第8章 ハーモニック・ナンバー
第9章 テイラー展開とバーゼル問題
第11章 分割数

面白そうな部分をかいつまんで、読んでみました。


第4章 フィボナッチ数列と母関数
(つづきです)

振り返って

僕は納得できない。この式、本当だろうか。だって、フィボナッチ数列は全部整数だよ。一般項に√5が出てくるとは思えない。
満足げな顔で、すっかり冷めたコーヒーを飲んでいるミルカさんは、僕の疑問に「試してみたら?」と言う。

じゃあ、たとえば、 n = 0, 1, 2, 3, 4 で検算してみよう。

0, 1, 1, 2, 3 と、確かにフィボナッチ数列になっている。おお、そうか。具体的な n で計算すると、分子分母で √5 がちゃんと消えるのか!
うーん、何ともすごいな。僕もコーヒーを飲みながら、今日やったことを振り返ってみた。僕たちは、フィボナッチ数列の一般項(つまりnについての閉じた式)を求めようと思った。そのために、 僕は次の手順を踏んだ。

(1) フィボナッチ数列のFnを係数に持つ母関数 F(x) を考える。
(2) 関数 F(x) の閉じた式 (こちらはxについて閉じた式だ) を求める。そのときにフィボナッチ数列の漸化式を使った。
(3) 関数 F(x) の閉じた式を無限級数の形で表す。そのときの x の係数がフィボナッチ数列の一般項だ。

つまりは、数列を係数に持つ関数――母関数――を使って、「数列を捕まえた」んだ。なるほど……。 

しかし、長い道のりだ……。


《 フィボナッチ数列の一般項を求める 》 旅の地図

::::::::::::: (1)
::フィボナッチ数列 ::――→::母関数F(x)
:::::::::::::::::::↓(2)
フィボナッチ数列の一般項  ←― 母関数F(x)の閉じた式

::::::::::::: (3)



ミルカさんが話し始めた。
「母関数は、数列を扱う強力な方法だ。なぜなら、私たちが知っている関数の解析技法が、そのまま母関数の国を歩くときに役立つからだ。関数で磨いた技術が、数列の研究に役立ってくれる」
僕は、ミルカさんの話を聞きながら、別のことが心配になってきた。無限級数の計算をするときには、和の順序を変えてはまずいんじゃなかったっけ。問題ないんだろうか。ミルカさん……。
「条件をきちんと言わなければまずいんだけどね。でも今回はいいのよ。母関数を使って見つけたことは内緒にしておいて、出てきた一般項を数学的帰納法で証明しちゃえばいいんだから」



このあとも、興味深い項目が続きますが、このへんでこのシリーズはひとまず終了します。

現代数学に興味を持たれた方は、ぜひ『数学ガール』を購入して、お読みください。

 


解説
そうなんです、母関数という概念を持ちだしたのは、フィボナッチ数列の一般項 Fn を 《nについて閉じた式》で表したかった(フィボナッチ数列を捕まえたかった)からなんですね。
どうですか、面白かったですか。

普通のやり方ではフィボナッチ数列の一般項 Fn を 《nについて閉じた式》で表すことなどできないでしょう。
しかし、母関数の世界に一度旅に出て、母関数の閉じた式を導き出し、それから数列の世界に戻ることで、フィボナッチ数列を捕まえることができたのです。

すごくないですか。
私は感動しました。

私の妄想は膨らみます。
現実世界で解けない問題やら困難があったとき、別の世界に旅する(旅行に出るとか、本を読むとか、美しい音楽を聴くとか、集中して題目をあげるとか、あるいは4次元空間にワープするとか)ことによって何らかの方程式を導き出し、それを現実世界に当てはめることで、現実世界の問題や困難を乗り越えることができるかもしれません。

私にとっては、そのための信仰だったりするのです。


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獅子風蓮