「笑わない数学」とは、昨年NHK総合テレビにおいて放送された教養番組です。
全12回放送されました。
パンサー尾形貴弘が難解な数学の世界を大真面目に解説する異色の知的エンターテインメント番組です。
難しい内容を視覚的に理解できるように編集してくれているので、うれしかった。
でも、内容をすぐに忘れてしまうのが悲しい。
メモ的に、記憶の断片を残しておきたい。
「確率論」
初回放送日: 2022年9月21日
今回は「確率論」。「ギャンブルに勝ちたい」という欲望から生まれた学問は人類に何をもたらすのか?
まだ見ぬ未来に何が起こり得るかを予測し、今どうすればよいかを探る「確率論」。始まりは17世紀、2人の天才数学者フェルマーとパスカルが「ギャンブルで損をしない方法」を議論したことがきっかけだった。その後、純粋数学の中で発展し「現代確率論」へと進化を遂げると、ふたたび確率論は“ひともうけするための道具”として利用されていく。人間のあくなき欲望と純粋数学。世界の行方をも左右しかねない確率論の威力に迫る。
「笑わない数学」スタッフのブログより。
今回は「確率論」をお送りしました。番組をご覧になって、「そういえば学校で勉強したなぁ~」って思い出した方も多かったかも知れません。そんな感想に加えて、「確率って、数字や文字の計算や図形の証明とかの他の分野と違って、何だかモヤモヤする考え方だったよな」って思った方も結構いらっしゃるんじゃないかとも思います。
その理由は、まだ見ぬ未来にどうすればいいかを教えてくれるから確かにすごい考え方なんだけれども、時折、「自分の直感とはずいぶん違う結果が出てきて、ホントなのかぁ?」という感覚を持ったりすることが一つの原因かも知れません。そしてその一つの究極が、番組で紹介したIQ228の天才、マリリン・ヴォス・サヴァントが出した3つの箱の問題(別名:「モンティ・ホール問題」)なのかも知れません。
実は放送後、SNSを見てみると、マリリンの問題についての番組の解説に対して、「すごく分かりやすかったー!」と言って下さる方も多かったのですが、一方で「納得できない!」、「違和感がある!」、「間違っている!」、「訂正すべきだ!」と言う方も結構いらっしゃったんです。
この問題、1990年代、マリリンの回答(箱を変えたときの当たる確率は変えないときの2倍になる!)に対して、数学者たちまでもが「間違っている!」と異を唱え大論争になったわけですが、今回の放送にも沢山の「違和感」が送られてきたのを見ると、もしかしたらかつての大論争も無理もないことだったのかもなぁ、とスタッフ一同感じた次第です。
問題の復習
まずはマリリンの問題を復習しておきましょう。
・3つの箱A、B、Cのどれか一つに賞品が入っていて、あなた(選ぶ側)が賞品の入っているアタリの箱を予想して選ぶ
・仮にあなた(選ぶ側)がAを選んだとする
・どの箱がアタリかを知っている私(開ける側)が、たとえばBを開けて、賞品が入っていないことを教える(つまりこのとき、賞品はAかCのどちらかに入っている)
・ここで、私(開ける側)があなた(選ぶ側)に「選ぶ箱を変えてもいいですよ」と言う
・あなた(選ぶ側)は箱を変えた方が有利か? それとも変えない方が有利か?
マリリンはこの問題の答えとして、「変更する方が有利で、当たる確率は2倍になる」と言ったわけなんですが、なぜそう言えるのか、番組では次のように解説しました。
① あなた(選ぶ側)が最初にAを選んだ前提で考える
② まず、賞品がAに入っている場合、私(開ける側)はBかCどちらかを開ける
③ そして、箱を変えますか?変えませんか? と、あなた(選ぶ側)に聞くが、この場合はBとCはいずれもハズレだから、あなた(選ぶ側)は変えない方が有利(変えるとハズレ)
④ 次に、賞品がBに入っている場合、私(開ける側)は、Bは開けられないので必ずCを開けることになる。この場合、あなた(選ぶ側)は変えた方が有利(変えるとアタリ)
⑤ そして次に、賞品がCに入っている場合、私(開ける側)は必ずBを開けるから、この場合もあなた(選ぶ側)は変えた方が有利(変えるとアタリ)
⑥ 以上より、あなた(選ぶ側)が最初にAを選んだ場合、賞品がどの箱に入っているのか考えられる3つの可能性のうち、2つは変えるとアタリ、ということになる。このことは、あなた(選ぶ側)が最初にBを選んだときもCを選んだときもまったく同じ
⑦ よって、選んだ箱を変えずに賞品をもらえる確率は3分の1。変えて賞品をもらえる確率は、3分の2
⑧ 確率は2倍なので、マリリンの言うとおり、変えた方が2倍有利になる
「マリリンの問題」……興味深かったですね。
ネットで調べて、こんなのを見つけました。
●数学史上最も議論を巻き起こした問題(モンティ・ホール問題)
講師のたくみさんの説明、分かりやすいです。
くじ引きに割り込んでくるおばちゃんのたとえ、最高です。
獅子風蓮