笑わない数学」とは、昨年NHK総合テレビにおいて放送された教養番組です。
全12回放送されました。

パンサー尾形貴弘が難解な数学の世界を大真面目に解説する異色の知的エンターテインメント番組です。
難しい内容を視覚的に理解できるように編集してくれているので、うれしかった。
でも、内容をすぐに忘れてしまうのが悲しい。

メモ的に、記憶の断片を残しておきたい。



「カオス理論」
初回放送日: 2022年8月31日

パンサー尾形貴弘が数学の難問を大真面目に解説する「笑わない数学」。今回は「カオス理論」。数学で未来を予測することはできるのか?天才たちがたどり着いた結論とは。

かつて数学者はこんな確信を持っていた。数式を使えば未来を予測できる、と。たしかに天体の動きや、投げたボールの軌道は予測できるように思えた。しかし19世紀末以降、その信念をくつがえす事実が次々に発見され、世の中の多くは予測不可能だということが、数学的に明らかにされていった。わずかな誤差が急激に膨れ上がり、結果が予測不能になる「カオス」。サッカーのシュートに隠された「カオス」の謎にも迫る。




「笑わない数学」スタッフのブログより。



今回のキーワード


空中を飛ぶ物体の運動方程式

最初の誤差はそんなに気にしなくていい?

「太陽系のような星の集まりは、ずっと安定した存在なのかどうか、数学的に示せ」

万有引力の法則で未来の星の位置は正確に言い当てられる(はず)

星が2つなのか、それとも3つ以上なのかで、話がぜんぜん違う

最初の位置や速度がちょっとズレると、未来が全然違ってしまう場合がある!(初期値敏感性、初期値鋭敏性)

数学者の常識が怪しくなり始める

2重振り子(振り子の先に、もう1つ振り子がついたもの)

数式をつかって未来の気象を予測する研究

ほとんど同じ初期値を入力して計算したのに、なぜか結果はまったく正反対に…

予期せぬコンピューターの動作がきっかけで大発見

「ブラジルの蝶の羽ばたきは、テキサスで竜巻を引き起こすか?」

バタフライ・エフェクト

1970年代 カオスという単語が論文に登場

初期値敏感性が生まれる身近なメカニズム

なぜピザ生地はよく混ざる?

パイこね変換(伸ばして、たたむ)

カオスのビジュアル化

ベノア・マンデルブロ

複素数zをつかった、点の移動を表す数式

点が無限に遠くまで飛んでいくスピードによって、出発点を色分け

黒いカブトムシのような形が現れる「マンデルブロ集合」(図形)

マンデルブロ集合の境界線と初期値敏感性

どれだけ拡大しても最初とおなじような形がいくらでも見つかる性質「自己相似」

フラクタル(自己相似)

自然界のフラクタル例 ロマネスコ、シダの葉、肺の内部構造、銀河の分布




数学者が語る「カオス理論」の魅力 小山信也
「これくらい勉強すれば成績が上がるだろう」とか「今この量を食べておけば夜までお腹が持つだろう」など,日常生活で結果を予測しながら行動を決めることがよくあります.

そういうとき私たちは無意識のうちに「量的な見積もり」をしています.明確ではないとしても,数値化を行った上で関数(勉強量xに対する成績 f(x),食べた量xに対する満腹度 f(x))を考えているわけです.

もともと数学は,こうした日常の営みが自然に発展してできた学問であるといえます.そしてその前提には「だいたいこれくらい」と概算する考え方があります.常識では「1秒多く勉強したら急に成績が上がる」とか「1粒多くお米を食べたら急に満腹になる」ということは起きないからです.

カオスとは,こうした前提を崩すものです.あえてこの種の現象を日常に例えるなら,人間関係の機微が当てはまるかもしれません.ふとした仕草に惹かれて急に人を好きになったり,たった一言に傷ついて急に人を嫌いになったり,といったことは,予測不能で急激な変化を伴います.常に結果を予測しながら計画的に生きている人ほど,そうした突発的な変化に戸惑うものかもしれません.

本編で「数学者だけがカオスを理解していなかった」とのくだりがありますが,それはプロの数学者の研究に限定した話ではなく,上に述べた意味で一般の人々がとらわれてきた数学的な既成概念を含めてのことだと,私は思います.

確かに,古典的な数学の理論はカオス的な現象に対して,ほとんど無力でした.理論化できない問題を突破するには,ピザ職人の熟練の技や,ロベルトカルロスの天才的な技術に頼るしかなかったのです.

しかし私は,これもまた数学という学問の発展のワンシーンであると信じます.いつか人類がカオス的現象の解明に近づくときが来るでしょうし,それを解き明かす人間の営みにより,数学の価値がより高められるのだと思います.


「古典的な数学の理論はカオス的な現象に対して,ほとんど無力でした」
なるほど。

「人類がカオス的現象」の中には人間の心の問題や宗教の問題も含まれるのでしょう。
そうした面には、これまでの数学や科学は太刀打ちできなかったものの、今後は、数学や科学の進歩により、これらの問題にあらたなアプローチが生まれることもあるかもしれません。




 

今回も難しかったです。

 

今、人類はカオス的状況にあるといってもいいかもしれません。

戦争、陰謀論、謀略、人間の心の問題や宗教の問題……

今後は、数学や科学の進歩により、これらの問題にあらたなアプローチが生まれることを祈るような気持ちで待ちたいと思います。
 

 

獅子風蓮