私の愛読書は「ビッグコミック・オリジナル」です。

毎月、5日と20日の発売日には、いそいそとコンビニに買いに行きます。

先日、「もものこと」(山本おさむ)が最終回を迎えました。

ところで、私は、以前こんな記事を書きました。

樹木葬という希望(2022-08-30)

この記事の中で、「ビッグコミック・オリジナル」に連載されていた「父を焼く」というマンガを紹介しました。

「もものこと」は、その続編ともいうべきものです。

苅田有三、81歳。ひとり暮らし。
かつかつの年金で生きている。
心の支えは一緒に住む愛犬のもも。
ももといられさえすれば、幸せなのだ。
ある日、検診で余命1年と宣告された苅田。
一日も早く、ももの里親をさがさなきゃ……
必死で動きだす苅田の行く手を待つ運命は……


ラストに近づくと、様々な偶然が重なり、ももの里親探しが解決に向かいます。
以前、金銭的に援助した(踏み倒されが)義理の弟の娘(高橋)が看護師として、苅田の世話をみてくれたり、そのおかげで、元の飼い主が現れたり。
これって、偶然のようでいて、そうでもないのですよね。
苅田がかつて施した善行が、巡り巡って帰ってくるような「功徳」を感じます。
ももは、高橋の配慮で、苅田の最期に付き添うことになります。


__ももには分かっていたのです。

苅田さんに最期の時が近づいている事を……


そんな苅田さんにとって、ももがかけがえのない存在だったのも、わかるような気がする。
人も犬も……愛する存在を欲し……また愛される存在であることを願う……


やがて苅田に死が訪れます。

__この人は……死ぬのだ。
私は病院でもこのように亡くなっていく人たちを多く見てきました。

社会の片隅でひっそりと亡くなっていく人たち……
私の父も母も……そして苅田さんご夫婦もそうなのでしょう。
でも……この人たちは私という人間の誕生を助けてくれた。
ももという一匹の犬の命を必死で守ろうとした。
ただそれだけ……

でも……だからこそ私は……
せめて祈る……
祝福あれ……
祝福あれ……

か弱く、貧しく……しかしこの上なく美しかったこの人達に……
祝福あれ……!!



祈りや宗教は、本来、苅田のように社会の片隅でひっそりと亡くなっていく人たちのためにある。
そんなことを思いました。

大きな伽藍などいらない。

窮屈な組織などいらない。

政治的な権力などいらない。

正統性を巡っての争いなどいらない。

私も、こういう名もなき人たちのために、祈ります。
か弱く、貧しく、美しい人々が、心豊かで、幸せでありますように。


獅子風蓮

 

 


PS)マンガの感動的なところは文章ではなかなか伝わりません。

「もものこと」は3月末ころ単行本として発売予定ですので、興味のある方は是非購入してお読みになってください。

 

獅子風蓮