次に、この本を読みました。
コロナのパンデミックが始まってからの出版ですね。

本間真二郎『感染を恐れない暮らし方 新型コロナからあなたと家族を守る医食住50の工夫 』(2020.06)

 

もっとも大切なことは「免疫力」と「自然治癒力」を生活のなかで高めていくこと。自然に沿った暮らし方で、感染を遠ざけ、万一感染しても追い出す力を備える。米国・NIH(アメリカ国立衛生研究所)出身のウイルス学研究者で那須烏山の自然派医師が実践する医食住のヒント。

この本は、kindle unlimited で読みました。
目次を見てみましょう。

■はじめに
■1 新型コロナウイルスを恐れないために
■2 免疫力を高めるには腸内細菌を整える
■3 腸内細菌を育む自然に沿った食の基本
■4 自然治癒力を育む生活の基本
■5 医療と薬。つき合い方の基本
■6 環境リスクを下げる暮らしの基本


第2から第6章までは以前の本の内容の焼き直しですね。
第1章を詳しく見ていきます。

■1 新型コロナウイルスを恐れないために
 ●新型コロナウイルス感染症Q&A
  ・本当に怖ろしいのは「人の恐怖心」
  ・自然に沿った生活をしていれば、恐れることはない

 ●新型コロナウイルスをもらわない、うつさないために
  ・個人でできる感染予防の要は3つ
  ・マスク、手洗い、腸内細菌を元気にする生活
    マスクは有効。
    マスクには、飛沫感染のリスクを減らす効果はあきらかにあります。
    マスクによって、感染者がつばや分泌物を飛び散らしたり、
    ……するのを防ぐことになるからです。
    ……マスクは、サイズ的にはウイルスの侵入を防ぐことはできませんが、
    着用することでマスク周囲の湿度が高くなることにより感染を防ぐ効果も

    期待できます。
    手洗い、手の消毒は有効
    新型コロナウイルスは、インフルエンザと同じエンベロープを持つ

    比較的大型のウイルスですので、石けん

    やアルコールにはある程度の効果があると考えられることです。

「反ワクチン」の論者の中には、マスクはウイルスの侵入を防ぐことはできないと、マスク不要論を唱える人が少なくないですが、本間先生は「マスクには、飛沫感染のリスクを減らす効果はあきらかにあります」と明確に述べています。それは、マスクによって、感染者がつばや分泌物を飛び散らしたりするのを防ぐことになるからです。
納得できる説明ですね。


 ●重症化した場合、急激に悪くなる新型コロナウイルス感染症。
  重症化する背景から、今後の暮らし方を考える
  ・新型コロナウイルスの細胞上のおもな受容体はACE2である。
  ・重症化は、獲得免疫系が本格的に働きはじめる時期に一致している。


この項目では、ウイルス学の研究者だった著者ならではの知識を惜しみなく使って、コロナ感染症の重症化のメカニズムを示しています。

体の血圧や水分量を調節するもっとも重要な系があります。
RAS(レニン・アンジオテンシン系)と言いますが、系とは一定の相互作用や相互関連をもつ集合体です。この系は、血圧の調節以外にもたくさんの重要な働きをしていることがあきらかになってきています。……
RASが働くとからだは以下の方向にセットされます。

・RASが働くと「上がる」「進む」もの
 =血圧、炎症、ミトコンドリア障害、酸化ストレス、繊維化、硬化、老化。

・RASが働くと「下がる」「低下する」もの
 =免疫の働きとコントロール、組織保護。

とくに重要なのはRASが炎症や免疫反応のコントロールをしているということです。まずは、RASの亢進が続くと免疫機能は落ちている状態になると理解してください。……炎症が起きているにもかかわらず、免疫の機能自体は落ちていたり、免疫が過剰なまでに暴走しやすくなったりしてしまうのです。
このRASをコントロールしているもっとも重要な酵素が、「ACE(アンジオテンシン変換酵素)というものになります。ACEにはACE、ACE2の2種類があり、働き方のイメージは次のようになります。

・ACE =RASを促進する。
・ACE2=RASを抑制する。

つまり、新型コロナウイルスの受容体であるACE2は、からだの血圧や水分量、加えて免疫制御反応を調節するもっとも重要な系RASをコントロールし、炎症を免疫の暴走を抑制する要の酵素になります。

(中略)

新型コロナウイルス感染症の重症化の高リスク者である高齢者や基礎疾患をもつ人は、RASが亢進した状態や、肺の病気を警戒しなければならないのです。

(中略)

ACE2の発現は肺に多く、そのなかでも肺を膨らませる物質(サーファクタント)を産生する細胞(2型肺胞上皮細胞)に集中しています。ここが広範囲に障害を受けると、呼吸困難が生じ、細菌感染の合併も含め、重篤な肺炎になります。
新型コロナワクチン感染症では、とくに重症例で心筋症や不整脈を認めることが多いと報告されています。……心筋細胞でもACE2が発現していますので、これが障害を受けると、心筋症や不整脈を起こします。心筋症や不整脈はともに心不全や突然死にも関係します。

ARDS(急性呼吸窮迫症候群)、サイトカインストーム、二次性血球貪食リンパ組織球症はいずれも免疫の制御機能の破綻=暴走で起こります。ACE2は免疫を制御し暴走を防ぐ働きをしますので、これらはACE2の機能の低下により起こっていると考えられます。

ウイルスは、はじめに気道上のACE2発現細胞に感染します。その後、増殖したウイルスが感染細胞を破壊し、血流を通じて全身のACE2発現細胞に広がります。
このとき、ハイリスクの人ではACE2発現細胞が増えていることに加え、RASが亢進しているため、慢性的に免疫機能も低下しています。この状態で新型コロナワクチンに感染すると、以下のメカニズムで重症化すると考えられます。
(以下省略)


いやあ、勉強になりました。

ただし、以上の説明は、新型コロナ感染が広まった最初の段階、つまりデルタ株までに通用する説明ですね。
オミクロン株になると、ウイルスはACE2受容体に結合することなく、喉・口腔粘膜・鼻腔粘膜の「プロテアーゼ」に依存して分解・吸着し、主に喉・鼻で炎症を起こすと言われています。

新型コロナウイルスは変異の速度が速いので、医学的な情報も日々アップデートが必要で、大変です。

獅子風蓮