内海聡氏は、対話ブログの管理人であるシニフィエさんや、私の友人である海さんに大きな影響を与えた人物ですので、内海聡氏のことはきっちり批判しておこうと思い、図書館で何冊か著書を申し込みました。

今回は、この本を読んでみました。
内海聡『この世界を変える方法-99%の人に伝えたい <彼ら>を打倒せよ!』

ベストセラー『99%の人が知らないこの世界の秘密』、待望の第2弾!
前作が「理論編」ならば、今作は「実践編」。医療、食の問題はもちろん、政治、経済、メディア、歴史、宗教に至るまで、この世界を変えるためにはどうしたらよいか、私たちはどう行動すればよいか、圧倒的支持を集める医師が具体的な「処方箋」を提示する!


著書の宣伝文句には、上のように書かれていましたが、私に言わせれば、内容的には前著の二番煎じ、“具体的な「処方箋」”もしょぼいものでした。

「医学をどう変えていくか」という章では、
あらゆる医学は「不要」と思え
と説きます。
そして、次のような記述が見られます。
(読みやすいように、一部簡略化しています)

こういうときだけ病院に行こう
◎病院にかかる適応があるもの
  すでに死んでいる
  心肺停止
  事故、骨折
  溺水、誤飲、毒物中毒
  感染症の悪化
  ぜんそく重積発作
  脳卒中の疑い
  意識障害
  吐血、大量下血
  便がまったくでない
  無尿
  目、耳の急性症状
  お産の腹痛、出血

◎病院にかかると悪化するもの
  精神病、発達障害、自閉症、知的障害
  ワクチン接種
  急性期以外のガン治療
  心筋梗塞、脳梗塞の治療後
  ウイルス性感染症や、逆に治らないといわれる感染症
  高血圧、高脂血症、高尿酸血症、糖尿病
  肝炎、腎炎など
  膠原病、自己免疫疾患、アレルギーなど
  難病、神経疾患など
  慢性〇〇炎といわれるもの
  認知症
  白血病、血液病
  胃もたれ、下痢、便秘など
  原因不明の慢性疲労や筋症状
  アトピー性皮膚炎、じんましん、乾癬など
  メニエール症候群、再発性めまい症
  アレルギー性鼻炎、花粉症
  むし歯、歯周病
  自然分娩

なお、これらは「医学不要論」における一般的な定義なので、参考にするのはかまわないが、最終的には自分で判断していただきたい。私は責任を負う気はさらさらないし、そもそも私自身、この一部をおそらく守らない。
それは「病院にかかる適応があるもの」になったとしても私は病院にはいかないという意味だが……。


ここでも著者は、巧妙な書き方で、責任逃れを図っています。
私は責任を負う気はさらさらないし、そもそも私自身、この一部をおそらく守らない。

つまり、この記述を信じて病院を受診しなかったために患者が不利益を被っても、責任をもたないと言い切っているのです。

さらに、私のようにそのことを指摘する者の存在を予想して、
それは「病院にかかる適応があるもの」になったとしても私は病院にはいかないという意味だが……。
とも書いています。
二重に、言い逃れできるような書き方をしているのです。
著者は、そういう意味では、とても賢い人です。

「福祉と児童問題をどう変えていくか」という章では、次のように書きます。

老人福祉の最悪な現実
……私は、現代の老人たちにはみじんも可能性は感じていない。はっきりいって、虚無主義者や超悲観主義者にとっては、滅んでもらってかまわない人々こそ現代の老人たちである。

知的・精神障害も根こそぎウソ
……精神障害の99%は医原病にすぎず、残りの1%も、社会的問題と社会毒などのセットで起こる問題にすぎない。

生活保護については、私は非常に強い反発心を抱いている。
不正受給者……行政はこれを本気で取り締まる気はない。


著者には、弱者の視点に立った見方が全くない。

ネットを検索してみると、こんな記載が見られました。

障害児を産んだ親に「一生かけて反省」しろ 現役医師のFB投稿に批判殺到
2015年06月19日18時54分
   自ら「キチガイ医」と称する医師の内海聡氏が、障害を持つ子どもが生まれる原因は親にあるとして「一生かけて反省しなければなりません」などとフェイスブックに書き、批判を浴びている。
   バッシングに対しても「障害者の親は一生反省してもらってけっこう」などと応戦したため、批判は収まる気配がない。
子どもの障害はすべて両親の「食と生活」の乱れが原因
   内海氏はNPO法人「薬害研究センター」の理事長を務める内科医。多くの著作があり、積極的に講演を行う一方、「医学の9割は不要」など歯に衣着せぬ物言いで医学界を攻撃し、物議をかもしてきた。
   今回、批判を浴びているのは2015年6月13日に行った、出産に関するフェイスブックへの書き込みだ。
「もちろん理想が自然分娩なのも分かります。ただ、帝王切開だった自分を反省し生まれた子供を全身全霊をかけて守りましょう」
と投稿。さらに「障害の子どもも同じ」だとして、
「障害の子どもさんが生まれるというのは、いかに産む前妊娠前に両親が食と生活が乱れているかの証、それは一生かけて反省しなければなりません」
と書いた。
   子どもの障害がすべて両親の「食と生活」が乱れているのが原因とする主張に反発は多く、また悩んでいる人への配慮を欠くとして、ツイッターなどネットには、
「障害発生の全原因は親や『大人』にあるのか?」
「これは訂正して謝罪した方がいい。食と生活はいくつかの要因のうちの一つ」
「障害者の親は一生後悔しろとかダメでしょ。親のせいじゃないのに根拠のないことでその人達傷つけちゃいけんでしょ」
といった批判が相次いだ。
   反発を受けた内海氏は16日、「障害者の親は一生反省してもらってけっこう」と再び挑発的に投稿。あくまで親は「加害者」であるとし、
「もし本当に反省できる親がいるとしたら、決して障害を認めるとか個性であるとか、正当化を繰り返したりとか言い訳したりとか、障害が個性であるという業界がふりまいた嘘などを見抜き、決してそんなことは言わないのです」
などと主張した。


大学の小児科医局で、障害児やその親と接し、その立場に立った医療の大切さを学んだ私にとって、内海氏の発言は、実際の医療現場を知りもしない、無責任な発言としか思えません。

「政治と官僚システムをどう変えていくか」という章では、
政治と「あの国」の深い関係 という見出しで、
いわゆる通名問題を取り上げて批判したり、自民党政治家の実名をあげて特定の国と出自が関係があることを匂わせたり、ネトウヨを思わせるような差別的表現に近い記述が見られます。

「宗教界をどう変えていくか」という章では、オウム真理教や創価学会に対する記述がありますが、次のような記載には根拠があるのでしょうか。

オウム真理教の直接的支配者は創価学会であり、また朝鮮などにつながる利権であることは、これらの本でもたびたび指摘されている。また、創価学会と対をなすのが統一教会であり、……両教団とも1995年あたりから、オウムに大量に信者を送り込んでいたことが暴露されている。
麻原彰晃の父親は朝鮮人……
早川喜代秀は統一教会の元信者だった……
創価学会の池田大作名誉会長も在日二世だったことは有名……


著者は、はっきりいって、差別主義者で、根拠のないネット情報をかき集めただけの陰謀論者だと思います。

しっかり批判していきたいと思います。

獅子風蓮