ちなみに「うつみん」というのは、内海聡氏のニックネームで、たしか海さんもその呼び方でブログを書いていました。

前回、医師で反ワクチンのデマを拡散させている内海聡氏のことを取り上げました。
対話ブログの管理人であるシニフィエさんや、私の友人である海さんに大きな影響を与えた人物ですので、内海聡氏のことはきっちり批判しておこうと思い、図書館で何冊か著書を申し込みました。

最初に借りられたのがこの本です。

現代のニセ病気の大半は、医学で治せない。風邪、胃腸不良、体の痛み、頭痛、めまいなどから、さまざまな精神症状まで、さらに生活習慣病からアレルギーなども、ほとんどは治癒できない。それよりも「食べ物」「精神の持ち方」「排毒」に気をつければ病気は大幅に改善する。現役の医師がなぜ医学を見限ったのか?誰も書けなかった医学界の詐術が今、露わに。

内容的には、ほとんど批評するに値しないものばかりでしたが、「支配者層とは何か」という章に、氏の思想的な来歴がうかがわれました。
氏が考える真の「支配者層」とは、「彼ら」と呼ばれる存在だそうです。
「彼ら」には、ある思惑があるといいます。
「彼ら」の考えの基本には「優生学」があり、「彼ら」にとって劣った人間は「愚民」であり、「愚民」は生きるに値しないと考えていると、氏は推測しています。
少し引用すると、こんな具合です。

……信じる信じないの話ではない。まさにそこにある現実であり、世界中の多くのジャーナリストや活動家が啓蒙告発している事実でしかない。
「彼ら」のことを啓蒙しているジャーナリストや活動家の一例をあげれば、マイク・アダムス……日本では数少なく、名前が表に出ない活動家がネットを中心に活動している。
日本でジャーナリストとして、医学だけでなく構造的な問題を含めて啓蒙しているのは、船瀬俊介氏が代表的である。私が彼を常に応援するのは、彼がとてて貧乏なのに、この問題に取り組む日本の第一人者であるからだ。


これを読んでも、氏が船瀬俊介の陰謀論にどっぷりとつかっていることが分かります。

各論として、様々な病気とそれに対する治療薬をやり玉にあげています。
一例をあげると、「動脈硬化や心臓の病気とその薬」という章では、「低用量アスピリン投与の弊害」が列挙されています。

低用量アスピリン投与にしても同じである。確かに医学的研究では心血管疾患の予防においてアスピリン投与で有意差が出ているが、その一方で低用量であってもアスピリン服用による弊害は、その多くが見逃されているといってもよい。
アメリカではアスピリンの過剰消費による消化器疾患の発生などが問題となっており、添付文書を見ても、過敏症(発疹・むくみ)、胃痛、吐き気、嘔吐、胃炎、消化管出血、紅皮症(皮膚の激しい炎症)、中毒性表皮壊死症、皮膚粘膜眼症候群、再生不良性貧血などが記載されている。
これらをみてくるだけでも、最も命に関わりの深い循環器や動脈硬化に関係する領域でさえ、いかに無駄な薬、有害な薬があふれているかがわかるであろう。


他の治療薬についてもこんな感じで、それぞれの治療薬について、添付文書の副作用の項目が羅列されていて、それを根拠に「有害な薬」とレッテルを貼っているのです。

しかし、医師なら当然分かっていることなのですが、薬の添付文書には、可能性のある副作用の項目がたくさん並んでいるのが普通なのですね。
そこには、頻度の低いものや、程度の軽いものも含まれているのです。
医師は、そのことを承知の上で、薬のリスクとベネフィットを勘案して薬を処方するのです。
内海氏は医師免許を持って臨床医としての経験もあるのだから、そのことは承知のはずなのに、あえて素人の読者をミスリードするような書き方をしているのです。

その意味で、医師として許されざる行為と言わざるをえません。
デマを拡散しているといっても過言ではないでしょう。

最後の「おわりに」で、氏は次のように書いています。

文中にも書いたとおり、私は医学が嫌いであり、医者が嫌いだ。……(中略)……
私は医者ではなく、社会的に医学を見ている「医者と医療ジャーナリストと社会学者の混合物」であって、本当の意味での専門知識はそれほどないのだ。


氏は、医師として批判されるのを見越した上で、「私は医者ではなく」と自己規定し、「本当の意味での専門知識はそれほどない」と言っています。
医師という立場を利用して、センセーショナルな本を書いておいて、自分は医者でなく、「本当の意味での専門知識はそれほどない」と言っているのだから、あきれてしまいます。

その他の著作については、また時間をおいて、検証していきたいと思います。

獅子風蓮