共通テスト追・再試験 その7 [2023年度 第3問  問4、問5] | クマのアフタークラス

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問題及び解答は、令和5年度 追・再試験の問題 | 独立行政法人 大学入試センター (dnc.ac.jp)

令和5年度 追・再試験の正解 | 独立行政法人 大学入試センター (dnc.ac.jp)

 

 

第3問

問4: これは、「表」や「史料1」、「史料2」の内容が正しく読み取れるかをみる問題です。

延久の宣旨枡で一定の容量の基準ができたはずでしたが、中世には様々な枡が存在したことがここからわかります。

 枡は3つ出てきますね。整理しましょう。播磨国矢野荘(現.兵庫県相生市あたり)では同じ荘園内で、年貢米を徴収するための「公田の枡」と「重藤<しげふじ>十六名で使用する枡」という異なる2つの枡が存在したようです。(矢野荘の支配関係は複雑なので省略します)。さらに、支配者である荘園領主の東寺では、年貢を僧たちに分けるための「下行枡」という枡がありました。

 では、a~dの文を1つずつ読み、確認していきます。

 aは、「重藤<しげふじ>十六名で使用する枡」と「下行枡」の容量の差を問われている。0.867斗から0.585斗を差し引くと0.282斗の余分の米が余るので、正しい。

 bは、「公田の枡」と「重藤<しげふじ>十六名で使用する枡」では百姓たちの年貢負担が多いのは、表の数値から「重藤<しげふじ>十六名で使用する枡」の方なので、誤り。

 cとdは、「史料2」に出てくる「得分」は収益の意味だと解ればdが正解だと判断できます。教科書には出てきませんが、学校で使う史料集などには、鎌倉幕府が承久の乱後に畿内・西国などに配置した新補地頭の収益について定めた新補率法に「得分の事」とあるので、この機会に見直しましょう。

 

問5:まずは、「史料3」を素直に読むことです。現代語訳がしてあるので内容はつかめます。  

 この史料に書かれていることが「事実」なら、とんでもない悪代官ですね(「事実」ならとしたのは、「史料3」は百姓側の訴えだけが書かれており、代官側の言い分がわからないためです。別に代官を弁護するつもりはありません。( ;∀;))。

 XとYの文の正誤を確認しておきましょう。「史料3」の百姓の訴えの概要は、次の通りです。

 代官が「公田の枡」を(今までより大きい枡に)変えてきました。百姓は何度も元の大きさに戻してほしいと荘園領主である東寺に要求しますが、聞き入れられないため、枡の図面を東寺に送ります。すると、代官は(百姓の手元にあった)元の公田の枡を(証拠隠滅のために)取り上げ、さらい大きい枡を使うように要求してきたのです。

 代官にしてみると、荘園領主の東寺に送る米の量は決まっているので、少しでも多く百姓から年貢を多くとれば、その差額が自分の収益になります。百姓側は年貢が少ない方がいいので(小さい容量の)元の「公田の枡」を主張するのです。お互いに有利な枡を使おうとしており、Xの文は正しいことになります。

 Yはどうでしょうか。ポイントは2つ。「史料3」は荘園領主の東寺に書類で嘆願している段階で、直接行動には至っていません。中世の民衆の訴えのパターンとしては、①愁訴=領主への嘆願、②強訴=大挙して押しかける、③逃散=集団で逃亡する、④一揆=神仏に誓約して組織的行動、の4つがありますが、「史料3」は①愁訴の段階であり、一揆ではありません。また国一揆となると、国人の関与が前提になります。国人たちが団結し、武士や地域住民を組み込んでいく大がかりなもので、ここでは該当しません。したがってYは誤りとなります。

 なお、余談ですが、ここで出てくる百姓は荘園・公領で年貢などを負担する身分ですが、農民のみでなく、漁民やその他の産業に従事する人々も含んでいます

 それにしても、公田の枡の容量を自分たちの都合で変えてしまうのは、「自力救済」の時代と言われる中世ならではですね。混乱は困りますが、逞しさには惹かれます。(*´▽`*)