本書は、梅沢富美男さんの初句集です。

 

「第一編 傑作五十句」では、梅沢さんが『プレバト!!』で披露した俳句のうち、句集に載せるに相応しいと夏井いつき先生が査定した「傑作50句」が掲載されています。一読しただけで梅沢さんの表現力の豊かさ、懐の深さが強く感じられます。

第一編は梅沢さんの俳句をしみじみと味わうのが本来の読み方だと思いますが、番組内で評価が高かった句が「傑作50句」の中に入っていなかったり、逆に評価が芳しくなかった句が入っていたりと予想外なところもあって、長年番組を見続けてきたファンにとってはまた違った愉しみ方ができるパートだと思いました。

 

「第二編 梅沢富美男の歴史」の前半部分は、梅沢さんが特待生に昇格してから永世名人となるまでの俳句87句が時系列で並べられています。こうやってみるとなかなか壮観ですが、一つわがままを言わせてもらうなら、番組初登場時から句集完成までの俳句全てが載っていたらなお良かったです。

後半部分は、梅沢さんと夏井先生の対談となっています。本書の中で最も密度の濃いパートで、梅沢さんの俳句に対する姿勢や番組の裏話などが語られていました。二人の関係性が垣間見えるようで、改めて今回の句集も二人で作り上げたものであることが伝わってきました。二冊目のタイトルは『二人三脚』でしょうか。

 

「第三編 梅沢富美男の学び」では、残念ながらボツとなってしまった俳句の添削例が10句分紹介されています。ボツ句ではありますがどれも永世名人になってからの俳句なので、添削もよりハイレベルな印象を受けました。本当にためになる内容なので、個人的にはもっと添削例があったら嬉しかったです。ただ、「ボツ句は世に残せない(=句集に載せない)」という本来のコンセプトを鑑みればこのパートはあくまでもプラスアルファ的なものであり、そう考えると10句という数も妥当な気がしてきます。

また、添削例の他にも梅沢さんのコラムやインタビューが載っているのも良かったです。

 

総評としては、正直物足りなさを感じる部分もところどころありましたが、全体的には真面目かつ丁寧に作られた良書だと思いました。

特別永世名人になってからの名句の数々も鑑賞したいので、早くも二冊目が待ち遠しいです。