はじめに
6月25日放送の『プレバト!!』「名人vs.新世代 俳句団体戦」を(今更ながら)見ました。
今回は、実力者が集う「名人チーム」と、新進気鋭の若手4人が結成した「新世代チーム」による団体戦で、名人チームは梅沢富美男、千原ジュニア、中田喜子、横尾渉、新世代チームは阿見果凛、加納、蓮見翔、三宅香帆という布陣でした。ルールは、俳句の出来栄えとディベート評価(自分の俳句の魅力アピール+相手の俳句への批評)を合わせて夏井先生が採点し、最終的に総合得点が多いチームの勝利となります。
お題は、「大切な人と行った思い出の店」でした。
第1試合 横尾渉vs.加納
夕涼の決起和牛の融点ぞ
横尾渉(永世名人)
同席の猫や盛夏のオムライス
加納(特待生4級)
横尾さんは「舞祭組」の決起集会を行った「鉄板焼き やすむら」(東京・目黒)を、加納さんは企画会議や打ち合わせの際に利用してきた「カフェ アルル」(東京・新宿)を詠んだ句での対決でした。
結果は、横尾さんが72点、加納さんが73点で加納さんの勝利。横尾さんの句は、「夕涼」と「融点」の温度差を意図して書いたものと思われますが、それが逆にお互いの効果を打ち消し合ってしまっているように感じました。夏井先生からも「融点」が悪目立ちしてしまっているとの指摘があり、「夕涼の決起和牛は口にとけ」と添削されました。これはいいですね、「決起」が決して物騒なものではないということがわかります。
加納さんの句はシンプルで私好みでした。お店の特徴である「猫」と「オムライス」の両方がそつなく詠み込まれていて、情報量が多いわりにはまとまっている印象を受けます。名人チームから「季語は『盛夏』でなくてもいいのでは?」という指摘を受けていましたが(これに対して加納さんも特に言い返せていませんでしたが)、私は「盛夏」が「オムライス」のこんもりとしたイメージを補強しているようで、いいチョイスだと思いました。
第2試合 千原ジュニアvs.三宅香帆
友興す社名託され蕎麦焼酎
千原ジュニア(特別永世名人)
新書大賞受賞生牡蠣十種盛
三宅香帆(特待生4級)
ジュニアさんは大阪でレギュラー番組を一緒にやってきたディレクターが独立する際、その社名を考えた「東京 土山人」(東京・中目黒)を、三宅さんは新書大賞の贈賞式の後、担当編集がお祝いを開いてくれた「Ostrea 新宿三丁目店」(東京・新宿)を詠んだ句での対決でした。
結果は、ジュニアさんが78点、三宅さんが74点でジュニアさんの勝利。ジュニアさんの句は、「社名託され蕎麦焼酎」という流れが気になりました。中七と下五はつながっていないほうが「蕎麦焼酎」がより際立つと思います。ただ、内容は本当にいいですね。エピソードをうまく俳句に落とし込んでいてオリジナリティにあふれています。添削後の「友の興す社名託さる蕎麦焼酎」は「友興す」の唐突感と説明感が薄れてさらにいい句だと思いました。
オリジナリティという点では三宅さんの句も分がありましたが、ジュニアさんからの指摘にもあったように、どうしてもドヤ感が……。全部漢字にしたり、「書」「賞」「賞」「種」で韻を踏んだり、本気で勝ちに来ていることが十分伝わってくる句です。なので、決して悪い句ではないんですけれども、ここまでいくとちょっとやりすぎ感が出てしまうという例でしたね。
第3試合 中田喜子vs.阿見果凛
雨上がり師の励ましの鮎御膳
中田喜子(名人10段)
晴れの日や鰻を真中より割つて
阿見果凛(俳句日本一高校生)
中田さんは渡鬼プロデューサーの石井ふく子さんに連れて行ってもらった「赤坂 SAKURA SAKURA」(東京・赤坂)を、阿見さんは俳句を頑張ったご褒美に両親が連れて行ってくれる「鰻と酒 うな辰」(愛媛・松山)を詠んだ句での対決でした。
結果は、中田さんが71点、阿見さんが76点(作品74点+アピールポイント2点)で阿見さんの勝利。中田さんの句は「雨上がり」が引っかかりました。実際にそのとき「雨上がり」だったのかもしれませんけど、「師の励まし」とあれば雨が上がったような気持ちにもなるでしょうから、わざわざ書かなくてもいいように思います。また、中田さんの話によると、石井さんからのバースデーカードに感動したとのことですが、この句だけ見ると「鮎御膳」に励まされたようにしか読み取れません。夏井先生も、このままではそのエピソードが伝わってこないということで、「鮎の香や師の励ましの言の葉に」と、かなり手直しを入れていました。
阿見さんの句は、私も鰻を捌いている場面なのか鰻を食べている場面なのか読みに迷うと思いました。一応、「晴れ(ハレ)の日」だから食べていると読み取ってもらえる、という説明はありましたが、もう少し補足がほしいところ(せめて「鰻重」とかだったらなあ……)。ただ、同じく論点となっていた「晴れの日」の表記については、私は「晴れ」でも「ハレ」でもどちらでもいいように思いました。阿見さん的には気持ちの晴れやかさを詠みたかったそうですが、仮に天気の晴れと読んだとしても「鰻」でめでたさは伝わってきますしね。「割つて」と余韻を持たせる終わらせ方もよかったです。
第4試合 梅沢富美男vs.蓮見翔
妻を待つ店のポジャギの夏暖簾
梅沢富美男(特別永世名人)
お座敷のぼんじり半ズボンのひざ
蓮見翔(特待生3級)
梅沢さんは家族で30年通い続けている「ミセス韓の店」(東京・自由が丘)を、蓮見さんは恩人・勝俣州和さんにご馳走になった「炭火やきとり 栃木屋」(東京・中目黒)を詠んだ句での対決でした。
結果は、梅沢さんが75点、蓮見さんが70点で梅沢さんの勝利。そして、総合得点は、名人チームが296点、新世代チームが293点で、名人チームの勝利となりました。
梅沢さんの句に出てくる「ポジャギ」とは、韓国の伝統的な布のことだそうです。それがわかれば光景も見えてきますが、理解するまで時間がかかってしまうタイプの句ですね。蓮見さんからは「店の」がいらないと指摘されていましたが、私はそこはあまり気になりませんでした。むしろ「店の」があることで「韓国料理店の前で待ち合わせしているんだな」とわかるので、必要なのでは、と。しかし、添削後の「妻を待つポジャギ涼しき暖簾かな」を見ると、断然こちらのほうがいい句に思えて、急に「店の」が説明くさく感じてきました。「いい句ができた!」と思っても、時間を置いて別の視点から見る大切さを思い知らされます。
蓮見さんの句は、個人的にはけっこう好きでした。「半ズボン」で勝俣さんを表しているのも面白かったですし、ジュニアさんからの「勝俣さんは年中半ズボンだから季語として薄い」という指摘も笑えました。ただ、「半ズボン」を穿いているのが相手なのか自分なのかわかりづらいという点は、たしかにそうだな、と。添削後の「先輩は半ズボンぼんじり美味し」なら誰が「半ズボン」の主なのかは一目瞭然ですし、奢ってもらっている様子もきちんと伝わってきますね。
おわりに
どの試合も納得のいく勝敗で、名人チームの勝利も順当な結果だったと思います。
今回のハイライトは第3試合ですね。正直阿見さんの76点はちょっと高すぎる気がしましたが、自分がもしあの場に立っていたらたぶん泡を吹いて倒れてしまうので、そう考えるとあの点数も妥当に思えてきます。名人チームからの追及を真正面から受けて立つ阿見さんも、相手が10代でも一切容赦ない中田さんも、どちらも素晴らしかったです。
今回、わけあって1か月ぶりに『プレバト!!』を視聴しましたが、やはり面白いですね。最近放送頻度が落ちているようですが、まだまだ続いてほしい番組です。
出演者・スタッフの皆様お疲れ様でした。