はじめに

4月23日放送の『プレバト!!』「名人vs.特待生 大好きな店 俳句団体戦」を見ました。
今回は通常のタイトル戦と異なり、名人・特待生が4人1組のチームを組み、「大好きなお店」をテーマに詠んだ俳句で競う団体戦で、「名人チーム」は梅沢富美男、千原ジュニア、横尾渉、中田喜子、「特待生チーム」は蓮見翔、矢柴俊博、三宅香帆、ふくらPという、“ベテラン対新世代”の戦いでした。ルールは作品評価とディベート評価を合わせて夏井先生が採点(100点満点)し、最終的に合計点が多いチームの勝利となります。

 

 

第1試合 横尾渉vs.ふくらP

ハツ・ガツ・ぼんじりツケ払いの朧

      横尾渉(永世名人)

 

藁の火や鰆の芯のやわらかし

ふくらP(特待生5級)

横尾さんは18年常連の焼き鳥店「炭火焼きMARU」(中目黒)を、ふくらPさんはQuizKnock御用達の創作和食「髙崎のおかん」(池尻大橋)を詠んだ俳句での対決でした。
結果は、横尾さんが82点(作品81点+ディベート1点)、ふくらPさんが72点で、横尾さんの勝利。ふくらPさんの句は横尾さんからの指摘のとおり、「やわらかし」は言わずもがなという感じがします。あと、個人的には「芯の」というのが引っかかりました。「芯まで」とかならまだわかるんですけどね。対して横尾さんの句は私も「朧」がちょっと弱い気がしました。が、それを抜きにしても「ハツ・ガツ・ぼんじり」という並列の型と「ツケ払い」の実体験が強かったですね。「鬱屈とした気持ちを濁音・調べで表現している」、「今は何者でもない自分の未来・将来を『朧』に重ねている」という夏井先生の解説を聞いて、80点台も納得の句だと思いました。

 

第2試合 中田喜子vs.三宅香帆

歓声の鱶鰭煮おしゃべりな春

       中田喜子(名人10段)


深煎りの音や合否待つ春空

三宅香帆(特待生4級)

中田さんは橋田壽賀子が愛した老舗中華「維新號」(紀尾井町)を、三宅さんは京大生行きつけのレトロ喫茶「喫茶フィガロ」(元田中)を詠んだ俳句での対決でした。
結果は、中田さんが71点、三宅さんが80点(作品79点+ディベート1点)で、三宅さんの勝利。三宅さんの句は「音」の是非が争点になっていましたが、私はあった方が合否を待つ静寂・緊張感が際立って良いと思いました。それよりも私が気になったのは「春空」。店内の光景なのに外のイメージが強い季語を持ってきているところに違和感を覚えました。一方、中田さんの句はジュニアさんが指摘されていたように、「歓声」と「おしゃべり」が重複している感じがします。「鱶鰭煮」の高級感と「おしゃべり」の庶民感のギャップを狙った意図も理解できますが、添削後の「百人の歓声春の鱶鰭煮」を見ると、素直に詠むことの大切さが感じられますね。

 

第3試合 千原ジュニアvs.矢柴俊博

二度付け禁止衣の軽き春を食む

     千原ジュニア(永世名人)


蕎麦盆をあてし右肩昭和の日

矢柴俊博(特待生5級)

ジュニアさんは目黒川沿いの大阪グルメ居酒屋「マハカラ」(中目黒)を、矢柴さんは蕎麦屋を演じる際にお世話になった「甲州屋蕎麦店」(西早稲田)を詠んだ俳句での対決でした。
結果は、ジュニアさんが75点(作品74点+ディベート1点)、矢柴さんが73点で、ジュニアさんの勝利。私は矢柴さんの句のほうが取り合わせが絶妙で好きでしたが、添削後の「蕎麦盆を重ねし肩や昭和の日」が良すぎますね。これを出されると一気に原句が詰めの甘い句に見えてしまいます。ジュニアさんの句も悪くないんですけど、矢柴さんが指摘したように「二度付け禁止」はベタな気がしますし、「春を食む」も若干手垢のついた表現に思えます。夏井先生からは、串カツらしい舌触りや音を「軽き」という言葉を使わずに言えていたら80点に届いていたとのことで、「二度付け禁止春食む衣はふはふと」と添削されていました。思わず唸ってしまう見事な添削です。

第4試合 梅沢富美男vs.蓮見翔

幕間にもつ煮掻き込む土用かな

      梅沢富美男(特別永世名人)


四月の独酌ボトルに二人の名

蓮見翔(特待生3級)

梅沢さんは下積み時代に通っていた下町グルメ食堂「食事処 まえ田」(浅草)を、蓮見さんはあら煮と刺身が自慢の居酒屋「都夏」(下北沢)を詠んだ俳句での対決でした。
結果は、梅沢さんが84点(作品83点+ディベート1点)、蓮見さんが71点で、梅沢さんおよび名人チームの勝利となりました。蓮見さんの句はどんな店なのかが分からないところが問題点として指摘されていましたが、私は「四月」という季語の必然性が感じられないところが一番の問題だと思いました。添削後の「独酌に目刺しボトルに二人の名」はすべての問題をクリアしていて流石の一言。季語を「四月」から「目刺し」に変えることで店が具体的になりましたし、「○○に△△」という対句表現もきれいに決まっています。梅沢さんの句は隙がなかったですね。「土用」といえば「鰻」という共通理解をうまく裏切った俳諧味のある一句でした。

おわりに

名人チームが312点、特待生チームが296点という、そこそこ差のついた結果になったのが面白かったです。『プレバト!!』ではこれまで天才キッズや俳句甲子園強豪校、東大王を相手にした他流試合がありましたが、今回は名人vs.特待生ということで、いつも以上に審査に容赦がない印象を受けました。
また、採点が100点満点方式だったのも良かったです。名人・特待生の句が通常査定だとどのくらいの点数になるのかは常々気になっていたので、そのおおよその基準を知ることができました。昇格は75点以上、句集掲載は80点以上が目安といったところでしょうか。となると、ジュニアさんの場合、一応勝利はしたものの、今回の句は句集には載らなそうですね。ジュニアさんは最後、一体どんな句で句集を完成させるのでしょう。楽しみです。(句集の締めが750cc(ナナハン)俳句だったらアツいなあ。)
出演者・スタッフの皆様お疲れ様でした。