『プレバト!!』の冬の俳句タイトル戦「2022年冬麗戦」を見ました。冬麗戦の出場者は、昨年特に良い句を詠んだと夏井先生に認められた14名で、名人・特待生以外からの意外な参戦もあって面白かったです。

 

まずは14位の堀未央奈さん

駒進め人生を知る年始め

今回の冬麗戦のお題である「人生ゲーム」を素直に詠みすぎてしまっているというか、説明的すぎるのが最下位の理由でしょうか。堀さんは昨年の「独立の夜やゴッホの星月夜」という句が評価されての出場で、番組中もダークホース感が凄かっただけにこの結果はアララという感じでした。

 

13位はIKKOさんの

幸せの尺度疫禍のちゃんちゃんこ

コロナ禍で幸せの尺度が変わり、父からもらったちゃんちゃんこを見て身近な愛を大切にしていこうという気持ちを込めた一句。説明を聞けばなるほどと思いますが、この俳句を見ただけではそこまで読み取れないのが残念。「疫禍のちゃんちゃんこ」も本当は愛おしい物なのに、正反対の意味に捉えられる可能性がありますね。

 

12位は立川志らくさん(名人4段)の

顕微鏡の蠢く人生ゲーム

地球の命は微生物から始まったことを人生ゲームで喩えた一句とのことですが、これもわかりづらいですよね。字面だけだと顕微鏡を覗いたら人生ゲームが蠢いているという風にも読めてしまいます。ただ、無季でしかも自由律なんて志らくさんぐらいしかやってくれないので、これからもこの路線でガンガン攻めてほしいです。

 

11位は北山宏光(特待生3級)さんの

ルーレット回せど止める炬燵猫

あともうひと押し足りないというタイプの句ですね。12位、13位と比較すると、作者が言いたいこともはっきりしています。ですが、「炬燵猫」というのはいちいちルーレットを止めに来るような活発な猫ではないので、そこが「季語の使い方が雑」という評価につながってしまったものと考えられます。

 

10位は犬山紙子さんの

箱の角亡き犬の毛や垂り雪

素材が良いですよね。犬を亡くしたことのある人なら強く共感できる一句ではないでしょうか。17音の器にのせるには材料が多すぎるということで、「垂り雪」を外して「亡き犬の毛が双六の箱の隅」という形に添削されましたが、たしかにこちらの方が淡々としている分ストレートに刺さります。

 

9位は村上健志さん(名人10段)の

寅の尾を目指す迷路よ年賀状

年賀状に描かれた寅のイラストを詠んだ句ですが、「よ」があることによって「寅の尾を目指す迷路」と「年賀状」が少し分断されてしまうので、そこが読み手を迷わせる原因のようです。「目指す」という表現もちょっと大げさで気になります。ですので、「寅の尾がゴール年賀状の迷路」は完璧な添削だと思いました。

 

8位は藤本敏史さん(名人10段)の

あざ笑う鬼の顔ある歌留多かな

「歌留多の絵の中にあざ笑う鬼の絵がありました」という単なる報告になってしまっているのが惜しい。色などの情報を足してより具体的な映像にする重要さを改めて感じました。本気で1位を狙っているとは思えない感じの句ですが、ここ数年色々あったフジモンさんにとって「人生ゲーム」というお題は酷だったのでしょうか。

 

7位は小倉優子さんの

裏濾す蕪やアドベントカレンダー

名人・特待生以外の出場者の中で一番健闘したのが小倉さんでした。しかし、「裏濾す蕪」と「アドベントカレンダー」の取り合わせは、やはりちょっと遠い感じがしますね。添削では「裏濾す蕪や」の部分を「離乳食煮て」「離乳食甘し」というように直されましたが、おそらく小倉さんはより具体的な光景を描きたかったのだと思います。

 

6位は横尾渉さん(名人7段)の

雪晴の転勤ミニマリストの棚

「ミニマリスト」という言葉を使うよりは棚がどういう状態なのかをしっかり描いた方が良いという指摘はごもっともだと思いました。あとは「これから転勤するのか」あるいは「転勤を終えたのか」という時間軸も若干わかりにくかったかなと。添削後の「もの少き転勤雪晴の街へ」であれば明確に前者だとわかりますね。

 

5位は梅沢富美男さん(永世名人)の

冬旱地図から消えた村の数

梅沢さんは4位、5位あたりが定位置となりつつありますね。良く言えば安定しているということなんでしょうけど……。実際この句も添削なしでした。5位の理由としては、「冬旱」という季語を選択したことにより、「冬旱によって村が地図から消えた」と読めてしまう点があげられていました。季語の選択と因果関係には注意が必要。

 

4位は千原ジュニアさん(名人8段)の

雪吊や登校拒否の吾と祖母と

ジュニアさんが引きこもりだった頃、祖母と兼六園に行ったときの思い出を詠んだ一句だそうです。個人的には、今回の冬麗戦の句の中ではこの句が一番好きでした。作者の思い出と深く結びついている句の場合は、季語が動くか・動かないかという議論はしてはいけないという夏井先生の言葉にはハッとさせられました。

 

3位は森口瑤子さん(名人初段)の

嚔してスペードの位置忘れたり

肩肘を張っていない、森口さんの良さが出ている句です。内容が「くしゃみをしてスペードの位置を忘れてしまいました」という因果関係になっているという指摘もありましたが、この句の場合は因果関係が邪魔になっておらず、さじ加減が上手という評価でした。たしかに理屈っぽさよりリアリティが勝っています。

 

2位は千賀健永さん(名人4段)の

地球史の恐竜遠し炬燵の夜

「地球史」「恐竜」という壮大で遠大な上五・中七から下五「炬燵の夜」への着地(落差)がとても良いと思いました。特に「の夜」が上手いですね。自分だったら安易に「掘炬燵」とか「冬の夜」とかにしちゃうなあと反省。最後の1音まで手を抜かず、きっちりと情報を入れ込んだ一句でした。

 

1位は東国原英夫さん(永世名人)の

片襷硬し四日の身を通す

選挙活動の実体験に基づいた一句。これは東さんにしか詠めませんね。たった17音で片襷の冷たくて硬い感触と、これからいよいよ選挙だという緊張感がひしひしと伝わってくるのが凄い。また、一句全体が引き締まった感じがしているのは「四日」という季語の力も大きいと思います。人生経験の豊かさで勝ち取った1位でした。

 

今回の冬麗戦も最後まで楽しく見ることができました。

出演者・スタッフの皆様、お疲れ様でした。