死にゆく者は、他者を見つめるまなざしが
深くなる。
大切な人を目に焼き付けておきたいという
気持ちの表れだろう。
ただ、その視線は力なく、たよりない。
砂時計が落ちる感じ。
寄り添うとは、その砂に自分の砂を足して
一緒に落ちていくこと。
死ぬとき一人は戯言。
死ぬまでに、時間のある人が感じてしまう
孤独や疎外感のことだ。
人が、死を敵として考えたしわ寄せとして、
死に際に受け取ることになった感情だ。
人間は死ぬときに必ず上を向く。
横を見たり、誰かを見たりしない。
死ぬという状態の多くは眠ることと同じ。
痛いや苦しいではなく意識をなくすこと。
ただ、それだけなのだ。
臨死体験者は、世界と一緒になるという。
自分が液体となって、空間に溶け込んで、
他のモノと区別がなくなるらしい。
死とは普段の生活の中にただある。
他者とは関係のないところでただ逝く。
そして日常は、ただ淡々と続いていく。
人生とは、所詮そんなものだ…。
