皆の衆、未だに天下一の興奮が冷めやらぬ男…島津義弘である。
本日は暇。
久々に全く甲冑を身に付けることなく、一日ゆるりと過ごすことができた。
激戦から二日。
しかしそれでも、目を閉じれば様々なことが思い起こされる。
本日は天下一を終えて思ったことなどを記してみよう。
天下一決定戦、我ら熊本城おもてなし武将隊の結果は二位。
この結果に関して思ったことは…
嬉しさ半分、悔しさ半分。といったところであろうか。
やはり天下一、金の太刀を目指しておった以上、二位という結果に心から満足することはできぬ…。
しかしその一方で、我らの演舞を見た皆から多くの賞賛の声があがり、演舞の終盤には会場から手拍子まで沸き起こった。
本戦の演舞時間は約十五分。
演舞をしておってこんなにも「楽しい」と感じたことは今までに無かった。
ほんに幸せな時間であった。
正直に申すと、終盤には感極まってわしの目には熱いものが込み上げてきた…。
“鬼の目にも涙”とはこのことであろう。
このままずっと演舞を続けていたいとさえ思った。
終わってしまうのが寂しかった。
そんな不思議な感覚であった。
本戦の演舞は、怪我のために舞台に立つことがかなわなかった黒田殿の想いを込めた構成に致した。
演舞を見た皆にはわかったかもしれぬが、わしが持っておった二本の刀のうち、一本は黒田殿の物。
そして演舞終盤の「虎嘯風生」は陣形が不格好になることを承知で、敢えて“全員演舞”の陣形にこだわった。
我らの演舞を初めて見る者には、ただの不揃いな陣形にしか見えなかったかもしれぬ。
あるいは見たことがある者でも、六人用の陣形に変えた方がよかったと思う者もおるであろう。
しかしそれでも、我らはこの陣形にこだわった。
何故なら、我らは七名全員で『熊本城おもてなし武将隊』だからじゃ!!
確かに舞台上には黒田殿は立ってはおらぬ。
しかし天下一を獲りたいという想いは同じ。
故にこの戦は七名全員で挑んでおるのじゃ。
わしは同じ九州の大名として、友として、彼に代わって『黒田官兵衛孝高』の名乗りをあげ、彼の想いを皆に届けたつもりである。
わしの力で何処まで皆に想いが伝えられたかわからぬ。
しかし演舞を見た皆から、そして共に天下一を争う他の武将隊の方々からも「まるで黒田官兵衛殿がそこにいるようだった」との声を頂くことができた。
わしにはこれ以上に嬉しき言葉はない!!
天下一には届かなかったが、我らの伝えたかった想いはきっと皆の胸に届き、多くの者が笑顔になった。
故に二位という結果にも素直に喜んでよいと思う。
じゃが我らはこれに慢心することなく、次こそは天下一の栄冠を掴むつもりじゃ!!
もちろん、黒田殿も一緒にな。
銀の太刀を獲得できたのも、多くの“家臣”の皆の支えがあったおかげじゃ。
皆の衆、改めて援軍感謝致す!
心のこもった手紙や、想いを飛ばしてくれた皆も本当にありがとう御座った!!
願わくばこれからも我らのことを支えて欲しい!!
本日の熊本城では早速、銀の太刀を皆に披露したとか。
援軍かなわなかった皆にも、我らからの感謝の気持ちは伝わったであろうか。
あとは…
早く黒田殿にも銀の太刀を見せてあげたいのう!!
…おっと、だいぶ長くなってしまったな。
まだ他にも話したいことはたくさんあるが…それはまた別の機会にしよう。
さて、明日は久々に熊本城への出陣じゃ!!
長く留守にしたぶん、おもてなしにも力を入れて行かねばな!!
では本日はこれにて。
皆の衆、明日もよき一日に。
官兵衛殿の想い、皆に伝わったのならばわしも嬉しい。
島津義弘