「ユキさああん」
オバサンはまた声を張り上げた。
「ママ、もしかしてオジサンのこと言ったの?」
「まさか」
ママは泣きそうな顔をしている。
そうだ。
あのオバサンは霊能力者だと涼太は言ってた、もしかしてオジサンがここに来るだろうってわかっていたんだろうか。
「朋緒、ちょっと待ってて」
ママは慌てて玄関に走って行った。
朋緒の体は震えだした。
怖い。
このままだとあのオバサンにオジサンが捕まってしまう。
「涼太くん、助けて」
思わず口に出してしまった朋緒は気づく。
あ、涼太は味方じゃない。
どうしよう。
でもここにいたらだめだ、逃げないと。
朋緒はランドセルの中身を全部出した。
体操服でオジサンをくるみ、ランドセルにそっと入れる。
「ごめんねオジサン。
ちょっとがまんしててね」
朋緒はランドセルを背負い、玄関に出る。
あのオバサンがママに何か話している、ママは泣いていた。