「昨日塾休んだんだね、用事あったの?」
涼太は朋緒に話しかけた。
どうしても彼女に確かめたいことがある。
でも、怪しまれてはいけない。
涼太は家の仕事が嫌いだった。
自分がいずれこの仕事を全面的に継がなくてはいけないことも含めて。
「お前は素質があるよ。あのお方も喜んでくださっている」
ため息をついた。
「なあに、涼太悩みでもあるの?」
前の席の摩理沙が振り向いた。
「ごめん。そんなんじゃないよ」
涼太は摩理沙が面倒くさい。
彼女が自分に興味を持っていることは知っている、そして観察されていることも。
仕方ない。
あとでまた一部分「削除」しよう。
摩理沙はコントロールしやすい。
隼人もだ。
二人はたやすく涼太に従うからだ。
しかし朋緒は。
涼太にとって一番手ごわいのが彼女だとは。
探していたものは、白いカーテンに覆い隠された。