「行ってきます」
「行ってらっしゃい。
あ、朋緒あのね」
「何?」
ママが呼び止めたから、何か忘れ物したのかと朋緒は肩に力が入る。
「ううん。気をつけてね」
「うん」
朋緒の家の玄関を出た先に木があるのだが、そこに一羽のカラスがちょこんと留まっていてこっちを見ていた。
あれ?
このカラス、なんだか見覚えがあるような。
「ねえ、パラレルワールドって知ってる?」
摩理沙が涼太と隼人に話している。
「この世界は無限にに存在するんだって」
「知ってるよ、平行世界のことだよな。映画で見た」
隣の席の涼太は静かに二人のやり取りを聞いていた。
「私がアイドルになってるパラレルワールドもあるってことだよね、涼太」
「摩理沙がアイドル?ありえね~」
「は?失礼じゃない」
「あるよ、いろんな世界が存在するんだ」
「ほら~。さすが涼太」
そういえば昨日、涼太と摩理沙は二人きりで話をしに行ったんだっけな。
そんなことを考える朋緒に涼太は言った。
「だから、小人が存在するパラレルワールドもあるんだよね」