「あかん…の?」
「そうや。
トモちゃん、誰にも言うたらあかんで」
オジサンは強い眼差しで言った。
「どうして?」
「そら…おかしい子や思われるからや」
そうだろうか?
ママにはそう思われるかもしれない、でも涼太なら分かってくれるかも。
オジサンにそう言おうとしたら、
「それ、もうちょっとおくれ」
かっぱえびせんはもうなくなっていた。
「あ、うんどうぞ」
「やめられない止まらな~い、かっぱえびせん!」
歌いながらかっぱえびせんをかじるオジサン、お尻フリフリ踊りなんだか芸人さんみたいで可笑しい。
「あはははっ!」
思わず笑ってしまった。
「トモちゃん、さっきの話やけどな」
オジサンはまた真顔になった。
「ワシは飼いならされへん、自由な男や。
そやから危険でもなんでも外の世界で生きていく。
それがこのワシ、それこそがオジーなんや」
「わかったよオジサン」
「すまんねトモちゃん」
「ううん。でもホントに気をつけてね」
「朋緒!塾に遅れるわよ」
ママの声がした。いつの間に帰宅してたんだろうか。
「あ、いけない、もうそんな時間か」
「今どきの子どもは過酷やなあ。ほなまた!」
「オジサン、気をつけてね!」
かっぱえびせんを大切そうに抱え、窓の隙間から外に出たオジサン。
朋緒はアジサイの中に入るまで見送っていた。
と、急にママが部屋に。
「朋緒、なに一人で話してたの?」
「一人じゃないよ」
あ、いけない。
トモちゃん、誰にも言うたらあかんで。