朋緒は机の引き出しにかっぱえびせんを入れている。
これでオジサンがいつ来てもいい。
「朋緒、なにニヤニヤしてるの」
ママが朋緒を見ている。
「えっ。ううん別に」
「いいわね、何も悩みがなさそうで」
ママは大きなため息をついた。
「ママ、行ってきます」
返事はなかった。
と、玄関を出たらカラスがいた。
「わっ!」
あの時オジサンをくわえていたカラスに違いない。
朋緒が出てくるのを待ちうけていたのか、
何かを探るように朋緒をじっと睨みつけてきた。
「オジサンはいないよ」
朋緒がでそう言うと、カラスはバサバサッと空に舞い上がった。
握りしめた手のひらがぐっしょり濡れている。
「おはよう。
オジサンにかっぱえびせんあげた?」
涼太から声をかけてきてくれた。
「おはよう。
ううん、昨日は来なかった。はいこれ」
朋緒は丸いチョコレートをそっと涼太に渡す。
「ありがとう。これロシェのチョコだ」
「家にそれしかなくて。ごめんね」
お菓子は学校に持ってきてはいけない、涼太はさっとランドセルに入れた。
「今の何それ」
目ざとい摩理沙に見つかったようだ。
「ねえ、涼太に何渡したの」
その大きい目でじっと見つめられると、朋緒は何も言えなくなった。
「お礼だよ」
涼太が答えてくれる。
「お礼って、何の?」
「後で話すよ、休み時間に裏庭の花壇の前に来れるかな?」
「行く!」
摩理沙は顔を輝かせた。