「えっ、これで?
こら、小さい子をいじめたらダメでしょ、えいっ!」
朋緒はカラスに近づくのが怖いので、少し離れたところから傘を振り回した。
すると、
「はあ~っ!」
大きくカラスがため息をついた、ような気がした。
そしてくちばしにくわえていた小さい子、いやオジサンをポトッと落とし、空高く飛んでいった。
「いたたた、ほんまえげつないことしよるわ」
朋緒の目の前に、小さいオジサンが転がっている。
なんだか顔も身体つきも丸い。真っ赤なTシャツに迷彩柄の半ズボン、草履のようなものを履いている。
しゃがんでオジサンを覗き込んだ。
「大丈夫?」
「わっ!」
朋緒を見つめるその目はまん丸、あごには薄いひげがはえている。
「お嬢ちゃん…、あんたわしが見えるんか」
「見えるから助けてあげたんだよ」
「ほうか。おおきに」
「どういたしまして」
「ああほんまに災難や、わしもやきがまわったもんや」
そう言ってオジサンはよたよたと道を歩いていき、すぐそばのツツジの中に消えてしまった。
「あれ、小人なのかな?」
朋緒は小さい頃に読んだ小人の絵本を思い出した。