リカたち家族の贈る言葉が終わり、最後に娘のユカリさんが前に出た。

 

「本日は父のためにここにお集まりいただき、誠にありがとうございました。

最後に娘の私から、生前の父について紹介させていただきたいと思います。

あんな父ではありましたが、

リカさんを始め、妻ケイコさん、英会話教室の皆さまがた。

ま~、女性にもてること!

あのハゲのどこがそんなにいいんですかねえ」

参列者がどっと笑った。

 

「でも、そんな父を私も愛しておりました。

父と私には血の繋がりはありません。

シングルマザーの母と父は結婚したんです。

祖父の会社を継ぐため政略結婚したなどという声もあったようですが、

むしろ逆でした。

父のおかげでつぶれかけた会社を立て直すことができたんです。

今もこの会社は奈良の地元企業として続いています。

親族ではない、信頼できる人物が経営者に変わり昔より発展しております。

父には人を見る目があるからです」

 

それはリカの知らないサッチンだった。

経営者として何とか会社を立て直し、存続できるようになったらあっさり人に譲る。

その方が確かにサッチンらしいかもしれない。

 

「中学校しか卒業していなかった父は、勉強するのが大好きでした。

きっとそれこそが父の夢だったんでしょう。

難病を患い、入退院を繰り返していた母の介護をしながら英語を独学で勉強し始めました。

皆さんが知っておられるのは、きっとそこからの父でしょうね」

 

そうだ。

勉強したかったんだ。

リカにそんな思いが与えられた時、不思議なようにサッチンとの出会いがあった。

サッチンとリカは似た者同士だったのだ。

 

「私に託された母の願いは、父に幸せになってもらうことでした。

ありがとうございます。

皆さまのおかげで私は、どうやら親孝行出来たようです」