「それでしばらくの間、家に戻ってくるのよ咲が」

「そらええことですわ、お産は女性にとってこの上ない大仕事ですから。

母親が傍におってくれるほど有り難いことはありません」

ジンナイさんの言葉にサッチンは同意した。

ここはサッチンの家、広々としたマンションの一室。

タイセイのボランティアお疲れさん会をしようと、日曜の夕方こうして自分の家にリカの家族とジンナイさんを呼んでくれたのだ。

テーブルの上にはジンナイさんが持ってきたグラタン、リカの作ったハンバーグ、

そしてサッチンお手製のクリームシチュー、ギョーザ、ポテサラなどが並んでいる。

掃除もしておりスッキリしている、準備大変だったんじゃないかな。

 

ジェニファーと咲ちゃんのカップル、当初は養子をもらおうとしていた。

しかしその前に体外受精を試してみて、なんとすぐに成功したのだという。

しかもそれを勧めたのがサッチンだというからリカは驚いた。

そうか、大阪観光の際ジェニファーの話に耳を傾けていたのは、相談に乗ってあげていたのはこのことだったのか。

「ジェニファーは咲ちゃんの願いを叶えてあげたかったんですわ。

出産を経験したいという彼女の希望。

養子を貰うことは、どないしても妊娠が無理やったらその時改めて考えたらええんちゃうかって、僕はそない言いましたんや」

 

サッチン、どんだけ人の願いの後押しすんねん。

 

「そやけどその、ジェニファーさん、相手の男性が誰でもいいわけじゃないでしょう、子どもの父親になる、その、子種の」

タカシはもごもごしながら聞く。

「そらそうですわ、誰かてええって訳やおまへん。

そやからジェニファーの実のお兄さんにお願いしたそうです、まあそれも僕がアドバイスさせてもらいましたわ」

「へえええ!」

ミクが素っ頓狂な声を出した。

「こらミク、大人の話に突っ込まないの」

「なんかサッチンが天使に思える~」

「ミクちゃん、ハゲの天使です」

「ピッカー!うわ眩しい~」

サッチンとミクのやり取りにみんな大笑いする。

「皆さん!主役はタイセイ君ですよー」

「いや自分は聞いてるだけでいいです」

ジンナイさんにビールで顔を赤くしたタイセイが答えた。