「タイセイ、休学せんでもええようになった。
レポート提出したらそのまま留年せずにあがれるらしい。今回のようなことはまれやけど、被災地での活動は教授も評価してくれるって」
天井を見つめながらタカシは語った。
「再試あるしタイセイ次第やけどな」
「あの子大学戻るん?本人がそないしたいって?」
「車の中で話したんやけど」
タカシは少し間をおいて、
「今回のボランティアで、こういった災害が起きたときこそ『人の繋がり』が大事や、それが分かったって。
それを俺たちは作っていかなあかん、被災地は高齢者が多いのも気になった、若い世代が変えていかなあかん。昔の人たちみたいな助け合いのコミュニティを。
宗教や人種を超えた繋がりを新しく創らなあかんって。
それをレポートにまとめて大学に出すんやって」
「へええ!いいやん、なんか夢があるね」
「そのためには自分は変わらなあかんって」
「うん?」
タカシはリカの方を向いて言った。
「自分は一人や思って閉じてたけど、それはちゃうかった。
もっと開いて周りと関わって、世界に自分から飛び込んで行かなあかん、
オカンみたいにな、そう言うてたで」
「ええ、私みたいに?」
「オカン、勉強したり転職したり、うまくいかないこともあるけど楽しそうや。
俺も楽しく周りと関わりたい、サッカーやってた時みたいにって。
あいつも考えてんねんな」
リカは胸が熱くなった。
「ワダさん差し入れくれたやろ。
そういうのがすごい感動したんやて、助け合いのコミュニティのアイデアや。
それで…なあリカ、久しぶりにその、せえへんか営みを、夜のコミュニケーション」
ほっとしたのと同時にまぶたが重くなった。
あれ。ここはどこだろう。
なんだか昔の長屋みたいなところだ。
「リカさん、おっきいきゅうり食べませんか?
形は悪いけど無農薬やからうまいでっせ」
サッチンが浴衣みたいな服を着ている。
「ごめんねリカちゃん、うちの人ったらへちまときゅうりの区別もつかないのよ」
えっ?あれジンナイさん?
「パパさんズッキーニときゅうりの区別もつかないでっせ~」
あっ、浴衣姿のジェニファーだ。
あはは、コスプレしてるのかな、着物姿のアジア系、白い肌、褐色の肌の子どもたちが長屋を走り回っている。
「こらあ!あんたたち気を付けなさいよ」
女将さん姿の咲ちゃんは大声を出した。
「オカン、今日は蛤よう売れたで」
「そらお兄だいぶおまけしたもん」
タイセイとミクは行商人か。
いやあ、大家族だなあ。