別れ際にサッチンは言った。
「リカさん大丈夫です、あの子は自分で答え見つけられます。
心配や思いますけどただ見守ってあげたらよろし。
年明けに英検二級受験しはるんやろ?」
そうだ、あと一か月少ししかない。そろそろ本腰を入れないと。
「はい、今度こそ合格します!」
「その意気ですわ。あんたはあんたのやるべきことをやんなはれ」
駅までの道、クリスマスのイルミネーションが輝いていた。
早朝リカは二級の過去問に取り組んでいる。
以前よりも理解度が増したように感じる。
そして、解くスピードが早くなった。以前は時間内に問題を解くことが出来なかったのに、今はぎりぎりだが最後の大問まで届く。
だが回答を見直す時間がない。だから引っ掛け問題にやられてしまう。
リスニングもそうだ。
全体的になんとなくは聴けるようになってはきたものの、まだ正答率は低い。
細かいところまで聴けていないから問題の罠に引っ掛かってしまう。
もっと「精度」を上げていかないとな。
自分は自分のやるべきことをやる。
タイセイが自分の問題に取り組んでいるように。
リカの仕事は年末まで入っていた。
今年のうちに綺麗にして年を越したいというのが人情だろう。
30日に最後の仕事を終えて我が家の玄関に入る。
「ただいまー。今日はお鍋しよ、て…え?」
リビングには憮然とした顔のタカシがいた。
ミクが小声でささやく。
「さっきまでお兄と大声で怒鳴りあってた。ほんでお兄、出ていった」