帰宅したらすぐにジンナイさんから電話があった。
「リカちゃんお疲れ様」
「ジンナイさん!」
彼女はリカにとって救世主のように思える。
「ニシさんから聞いたわ。リカちゃん目を丸くしていたって。
まあ珍しくないのよ、ああいったお客様は」
「…そうみたいですね」
「リカちゃんのことうんと褒めてたわよお」
「えっ」
「初めてああいうお宅にお伺いしたスタッフはね、お客様に対してなんていうか、ちょっとジャッジしちゃうのよね、よくこんなになるまで放置してるなって」
「…」
「でもリカちゃんは終始笑顔でお客様に接していたって」
「まあ、スマイルパートナーズですから」
「あはは!さすが」
実際にはひきつった笑顔だったであろうが。
「明日のお家はキャンセルになったからゆっくりお休みしてね」
ありがたい。
今日はゆっくり湯船に浸かるとするか。
咲ちゃんとジェニファーがしばらく日本に滞在し、親子の時間を持てたこともあってジンナイさんに余裕が増したように感じる。
次回二人が日本に来るときは子ども連れだと話してくれた。
リカのペアはニシさんが多い。
彼女は40代後半、3人の子を持つシングルマザーだ。
「ジンナイ支部長のおかげで今があるねん、まさに救いの天使」
リカにとってもそうだ。
「この会社に入ったん5年前やねんけど、その頃私離婚調停中やってん。
最後までもめたのは養育費のこと、元旦那は払うつもりなかったから」
「…」
「ジンナイ支部長が色々アドバイスしてくれた、向こうの親を味方にして保証人にして貰いって」
そうだ、ジンナイさんも離婚経験者だった。
「典型的なモラハラ夫やったらしいわ、離婚応じてくれなくって。
旧家っていうん?結構な家柄に嫁いだもんやから苦労したっていうてはった」
ニシさんはリカの知らないジンナイさんの情報を教えてくれた。