りり子が手掛けたお芝居「パキラの妖精」は、学生演劇にしては驚くほど評判になった。

動画配信の再生数も今までにないほど上がっているという。

カイ君のおかげだと瞳ちゃんは言う。

「もちろんりり子の台本がいいからやけどね」

「ちょ、カイ君たこ焼き焼くの上手ない?大阪人の私よりずっと」

「りり子下手くそすぎ、不器用か!」

若者三人は大笑いしている、あ、飲ませすぎかも。

「カイ君。もうちょっといけるやろ」

「ちょっと、お父さんもう勧めんといて!」

「ええやん、次ウイスキー行く?」

「あ、じゃあハイボールでお願いします」

「旦那さん、すっかりカイ君お気に入りやね」

ミドリちゃんも楽しそうだ。

「しゃあないなあ、若い子来てくれて嬉しくて仕方ないんやわ」

「さすがスミレさん。『繋ぐ人』やね」

「え?」

ミドリちゃんは頬が桃色になっている。

「お芝居の最後のセリフ。

 

『繋ぐ人』になって。

植物と人、人と人の橋渡しをする人になって。

あんたはそういう人やから。

 

あれ、スミレさんのことやなあって思った」

「あれはミキ、ミドリちゃんに言うた言葉ちゃうの」

そう言うとミドリちゃんはフフッと笑った。

 

「ねえカイ君。カイ君のお姉さんってどんな人?」

瞳ちゃんが聞く。

「あ、私も知りたい。うちのお母さんみたいな人?」

「まあ顔は似てないけど雰囲気はそんなかな。

穏やかで包容力があって、ちょっとお節介で」

「お節介はよけいです」

「わっ!すみません、そういう意味じゃ」

「カイ君写真ないの、見せて」

「最近のはないかなあ、僕が仕事しだしてからは離れて暮らしてるから。

ええっと」

カイ君はスマホをスクロールし出した。

「あ、あった、この人」

「どれどれ」

みんな画面を注視する。

 

「…え」

「この…ひと?」

「カイ君のお世話してくれた?」

「お姉さんって」

 

画面には40代くらいの金髪の男性、

いやオネエさんの笑顔が写っている。

 

「新宿二丁目で占いゲイバーのママをしてます。

今回のお芝居も姉ちゃんに相談して、勧められて、出演することに決めたんです。

姉ちゃんの占い二丁目界隈で有名で、芸人さんやミュージシャンもよくお店に来るんですよ」

「…カイ君。私も今度見てもらいたい」

瞳ちゃんがボソッと言った。

 

「いやあ、想像の斜め上やわ」

隣にいたパキラに呟いた。

そう。舞台に置いてあったパキラだ、りり子に頼んで貰ってきた。

 

「繋がるねえ、スミレ」

 

パキラが答えたような、気がした。

その葉っぱはパタパタ揺れている。