妹が初めてうちに来た日のこと、今でもはっきり覚えてる。
ばあばは言った。
「スミレと仲良くなれそうな、とても優しい女の子がいるの。今度うちに遊びに来てもらうわね」
でも、その時うちに出入りしていた近所のオバサン二人はこんな風に話していた。
「柏木の奥さん、今度はシセツの子引き取る気なんやろか。
前にニュースでやってたやろ、チジョウのモツレで殺された女。その子供らしいで」
「金持ちの道楽やろ、かわいそうな子供を家に招くのが」
意味はわからないがその言い方からとても嫌な感じを受けた。
「おばちゃん。
チジョウのモツレって何なん?」
わざと大きな声で聞き返すと二人は「ひゃっ!」と声をあげ気まずそうにどこかへ行った。
しかしその言葉は私の深い部分を探ってきた。
かわいそうな子供。
そうやろか。
私はそんな風に周りから思われてるんやろか。
ばあばはそのかわいそうなシセツの子は、私にお似合いやと思ってるんやろうか。
かわいそうちゃう。
私は世界一の悪い子や。
そんなかわいそうな優しい女の子と、私が気合うわけないやん。
でも。
うちに来たその子、きいは私の予想のはるか上空だった。