「なあ、お母さん早よ食べてみい?」
珍しくミクが急かすので、リカは手を洗ったらすぐに食卓に座る。
あったかい。
こうして食事が備えられていること、優しく迎えてくれている人がいることにリカはあらためて胸が熱くなった。
あかん、泣きそうになる。
リカは家族の前で泣いたことはない。
子供の頃からそうだった。
忙しい両親にはいつも放っておかれた。
泣いても誰もかまってくれない、だったら笑うほうがいい。
本当は泣きたいようなこと、沢山あったのに。
「サッチンありがとう。
いただきます」
「えっ?お母さんどうしたん、なんで泣いてるん?」
ミクが慌てだした。
「そらそうや。
ミクちゃん、お母さんはうんと頑張ってるねん。
朝起きて、ミクちゃんのお弁当作って、仕事して、ご飯作って、勉強して。
英検二級かてどんだけ合格したかったかわかれへん。
そんでもあかんかった、そら悔しいやろなあ」
「お母さん、いつもごめんなあ。
私自分のお弁当は自分で作るから、明日から。
だからこれからはその分勉強して、な?」
二人ともなんだかずれてる。
でも。
「おいしい、肉じゃがもオムレツも。
ミネストローネスープも。野菜いっぱい入ってて、この作り方教えてほしいわ」
「もちろんですわ、レシピ教えましょ」
I am so happy that I am crying.
幸せやから泣けるなんて、今は言わずにおこう。