二人でベッドに横になる。
ミドリの髪と私の髪、同じシャンプーの匂い。
なんだかくすぐったい気持ちだ。
「私な、家を出たいねん。
でも大学行かせてもらうだけでもありがたいのに、一人暮らしさせてなんてよう言わんし」
ミドリ、お父さん嫌いなん。
何も返事がなかった。
「きいちゃん。
きいちゃんはお姉さんと仲良えんやろ?」
ああ、スミレ?
仲良え、ていうか、まあ何でも遠慮なく言えるかな。
「そういうの、ええな」
ちょ、何何何?
家ではミドリ、言いたいこと言われへんの?
「弟おるんやけど、今中一の」
うん。
「その子、お父さんの自慢やねん。
私立の賢い男子校行ってて。
お父さんな、なんかあったらいつも、
タカオはお前と違って出来がええって言うねん。
タカオは俺に似たんや、
ミドリはお前の子やからお前に似て出来が悪いってお母さんに言うてて」
はあ?
思わず大きい声が出た。
なにそれ。
お母さんは言い返せへんの?
「お母さんはそんなんできへん。
いつもハイハイって。
言い返したりなんかしたら、その…」
口に出さなくても察しがつく。
バイト先にもいる、女を人間として扱わないサイテー野郎。
うちのやつが生意気言うたんでどついたった、とか。
なんだか胸くそが悪くなってきた。
「タカオもお父さんみたいに、私を見下してる。
お姉ちゃんの大学、恥ずかしすぎて友達によう言わんわって」
ファーッキュー!
暗闇で中指を立てた。
「えっ。なに」
ちょ、ミドリ。
明日からうちにおいで。
そんな家族、糞くらえ!
ミドリが抱きついてきた。
「ありがとうきいちゃん、ありがとう!」