きいちゃんだったパキラに語りかけるのが私の日課になった。

きもっ!私。

ヤバっ!私。

でもそうしていたらまたきいちゃんが戻ってきて

「やっほーりり子、元気やった?」って

葉っぱをパタパタしてくれるんじゃないかって思うから。

きいちゃんは私のどんなこともふんふんって聞いてくれた。

自分の意見を挟まなかった。

それはりり子がおかしいんちゃう?

そんなことも言わずただ、うんうんって。

だから私は親にも言えないことを話すことができた。

 

きいちゃん。

今日な、根岸さんが急に話しかけてきてん。

覚えてるかな?

小学校の時私のことぼっちで可哀想とか言ってきた子。

そう、あん時の学級委員長。

中学になってクラスは違うし、もう話すこともないって思ってたのに、急に。下校の時に。

でもな。

そんなこと実はよくあるねん。

あはは、人気者やろ?

きいちゃんのおかげやで。

あの事件のせいで、きいちゃんのせいで私は一躍有名人になってんで。

「あんた、あの星田きいの親戚?」

ほとんどが興味本位。

「あんたの叔母さんってレズなんやろ?なんか変なことされたりした?」とか気持ち悪いこと言うてくる。

もちろんガン無視。

でもな。

根岸さんはちょっと違うかった。

 

「これ、中野さんが描いたん?」

そう言って根岸さんはスマホの画面をかざした。

それはきいちゃんの「蒼のきみへ」の主人公修司。

私が書いた、ツイッタランに投稿したものだった。