御茶ノ水駅のホームで地面と平行になるほどに俯いた男が、右足はようやく履いているものの左足だけ、ボロボロの靴の踵を踏み潰して引きずりながら、乗客が並ぶよう指定された中央線側の白線に向かって数センチづつ進んでいる。一歩の飛距離が靴の半分ほどで、ホームの中央をスタートしたときには最初の電車が去ってしまい、こっちまで釣られて彼が次の電車に乗れるのかどうかハラハラしながら見つめ入ってしまった。次の電車の到着の知らせがあったときには、あと一人分だけ前に進めば指定の位置にたどり着く距離まで来ていた。一貫して同じスピードを保っているから、むしろそのまま転落してしまうのではないかと心配したが、行儀よく白線の内側に収まって歩を止めた。首尾よく入線した電車のドアが開き、隣のドアから乗り彼の乗車風景を見届けようと待ち構えた。しかし、時間調整で比較的長く停まった電車のドアが目の前に開かれているのに、足の裏でホームのコンクリートをゴシゴシするだけで最後の一歩を出さない。そうこうするうち発車ベルが鳴り、容赦なくドア
が閉じられ神田へと動き出してしまった。引き返した彼は、線路を背にして再びホームの中央目指して歩き出していた。素晴らしいパフォーマンスだった。 最初暗黒舞踏の担い手かと思った。でもいかんせんコントの国の人なのだった。
が閉じられ神田へと動き出してしまった。引き返した彼は、線路を背にして再びホームの中央目指して歩き出していた。素晴らしいパフォーマンスだった。 最初暗黒舞踏の担い手かと思った。でもいかんせんコントの国の人なのだった。