平壌開催“中止”の裏側…疑いが確信へ変わった瞬間とは? | ロメロの言いたい放題

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北朝鮮の懸念はFIFAからの制裁、同国関係者も当初は“疑いの目”

2026 FIFA W杯アジア2次予選北朝鮮代表戦の中止の背景は、3月21日の早朝、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のサッカー協会関係者に電話をかけた。その時は、一般人の平壌への渡航方法や旅行会社を紹介して貰い電話は終わった。有効な関係を築き20数年になる在日本朝鮮人蹴球協会・体育協会幹部であ人物と話している時は、この様な事態になる事で戸惑っている様子も感じ取れなかった。

 

「平壌で開催できるのか?」

 

彼等にとっては信じられない内容なのは当然だろう。何故なら関係者たちにとって平壌開催は悲願だったからだ。なでしこジャパンとの試合は、一度アジアサッカー連盟(AFC)に北京と平壌の定期便がないことを理由に断られ、ならば臨時便を出すと申し出たものの、サウジアラビアのジッダに変更された。

つまり今回の日本代表戦は3度目のトライだった。

AFCの視察団が平壌を訪れたときは「今日出国したそうです。上手くいけば今日中にAFCの本部があるマレーシアに帰られるんじゃないでしょうか」と、関係者は期待を込めて一挙手一投足を見守っていた。

数日で判断されると言われていたが、実際は平壌開催が決定されるまで6日ほどかかった。その間は連絡するたびに相手の緊張感が伝わってきた。もしかしたら日本が平壌開催を邪魔しているのではないかという疑心暗鬼の声も出ていたらしいが、「田嶋会長もホームアンドアウェーなんだから平壌でやるべきだと日本側の答えを出していた」ので、日本側が平壌開催を邪魔をしていたことはなく、やっとAFCの承認が下りた。

北朝鮮国内では2020年に新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、国内での国際試合ができなくなっていた。今回の日本戦はその処置が解除されて最初の国際試合になる予定だった。そのため多くの平壌市民は楽しみにしていたという。

選手も思いは同じだった。21日の試合で後半2分、日本のゴールポスト右を叩くシュートを放ったハン・グァンソンは2017年から2020年までカリアリ、ペルージャ、U-23ユベントス(すべてイタリア)でプレーしていた。新型コロナウイルスの影響で帰国できなくなっていたとき、ヨーロッパのあるチームからオファーが届いた。

その時、ハン・グァンソンは「自分は国内で両親に自分のプレーを見てもらいたい」と語り、帰国のチャンスを待つために断ったという。もしかすると海外でプレーしたほうが収入は多かったかもしれないが、それよりも家族に見てもらいたかったのだ。

 

関係者の沈む“声”…代替地模索も見つからず

日本戦では自分の姿を家族や友人に見てもらえるということで、選手たちは大いに張り切っている。そう何度も聞かされていた。国を挙げてこの試合を待ち望んでいたはずだった。だったらいきなりの中止はあるはずがない。

ところが、時間をおいて連絡するたびに彼の返答が曖昧になってきた。どうやら話が本当ではないかと疑心暗鬼になって来た。「日本で感染が拡大している、致死率が高い溶連菌の日本からの流入を警戒してAFCに開催地変更を申し出たようだった」。そして21日の昼過ぎには平壌開催はできないことが確定的になった。

その時点でグループ1位の日本は勝点6、2位のシリアは勝点4、北朝鮮は勝点3、ミャンマーは勝点1。上位2チームが3次予選に進めるので、北朝鮮にも十分にチャンスがある。平壌で開催できなくても、第三国で試合をして勝点を稼ぎたい。

代替地としてはどこがいいか、さまざまな議論が行われたという。なでしこジャパンのときのように、中国、ベトナムなどが候補に挙がっては消えた。

そして最終的には、日本への打診が決まった。「2試合とも日本国内ではどうか」というのは、日本にとっても有利な条件なので、それなら実現できるかもしれない。そして21日の試合のハーフタイムに日本サッカー協会(JFA)に打診した。

もしも日本が、サッカーを中心に回っているような国だったらすぐに外務省が動いてくれたかもしれない。だが日本のサッカー界には、依頼されて直ぐに在留期間を延長できるほどの政治力のある代議士はいない。どうしても在留期間を延長するには数日はかかる。ましてや国交のない国で「経済制裁」をしている国である。そんな問題を抱えながら在日本朝鮮人蹴球協会が動いていたがタイムリミットは翌日までだった。

日本に断られたことで目論見は崩れた。夜、議論が煮詰まっている時に、韓国開催になるかもしれないという情報が寄せられる。ほとんど可能性はないと思いながらもいろんな心配をしなければならなかった。関係者は、一睡もできないまま朝を迎えたと打ち明けた。

 

 

FIFAからの決定待ち「次の試合に向けて気持ちを切り替えるしかありません」

22日、AFCが打診した国からも了承を得られず、ついに事態が行き詰まった。そして夕方、AFCは「3月26日に行われる朝鮮民主主義人民共和国代表対日本代表の試合を当初の予定通り平壌もしくは中立地で開催されないことを決定した」と発表した。日本代表も活動を停止し、試合がなくなることは確定してしまった。

関係者の今の関心は、今回の一連の出来事に対して今後FIFA(国際サッカー連盟)からどんな裁定が下されるかということ。予選を放棄したということになれば、次の大会の予選参加禁止などという厳しい措置がとられるかもしれない。
一方で今回は感染症の拡大防止という理由で、この正当性が認められればペナルティーはないかもしれない。

 

北朝鮮との外交関係にも暗雲?

21日の試合では在日朝鮮人ら約3400人が国立競技場のゴール裏をチームカラーの赤に染め、熱烈な応援を送っていた。
終了直後、まだ平壌での試合が開催中止になったことを知らない、「強い日本とこんなに張り合うことができた。今日の後半みたいな戦いができれば、ホームでの試合はワンチャンある」と在日朝鮮人サポーターは、期待を膨らませていた。今回の“ドタキャン”はこうした在日社会にも予想外の知らせとなったことだろう。
北朝鮮は平壌での試合に先立ち、日本外務省の北朝鮮担当者らの訪朝を認めると伝えられてきた。

「今年2月、金正恩氏の妹、金与正党副部長は核戦力開発と拉致問題を日本が“障害物”とみなさないことを条件に『岸田文雄首相の訪朝もあり得る』と表明するなど、北朝鮮は日本との対話の可能性を探る姿勢を見せています。
日本でも与党内でも拉致問題の打開を模索する動きが活発になっており、日朝高官協議を実現したいと公言してきた岸田首相が動ける環境が広がりつつあります。
「将軍様(金正恩)に負け試合を見せるわけにはいかない。(中止を)聞いたとき、直感的にそう思いました。 
今日の試合で北朝鮮はしっかりやっていたし、ホーム(平壌)でやればもっといい試合を見せたかもしれない。平壌開催中止は今日の試合前に決めたようだし、とても解せない」と首をかしげる。
ドタキャンの理由は本当に感染症対策なのか? 将軍様のご機嫌とりのためか? はたまた何らかの政治的事情なのか? いずれにしても26日の試合は中止になった。タイムリミットは既に過ぎている。とても残念でならない