メキシコは日本の「優良なサンプル」
日本サッカー協会は、なぜアギーレに興味を抱いたのか? 大きな理由にあげられるのが、サッカーの共通点である。
メキシコ代表は、大型チームではない。ボクサーやプロレスラーでも、軽量級の選手が多い。近年は身体のサイズに恵まれたサッカー選手が増えているが、長身選手をズラリと並べたり、重量感のある選手を頼りにしたチーム作りはしてこなかった。ブラジル・ワールドカップに出場した23人を見ても、身長160センチ台の選手が4人、同170センチ台が11人と、チームの半分以上を占めている。
伝統的に高さや強さを強みとしないメキシコが、よりどころとしてきたのは個々が持つテクニックであり、攻守にわたる組織的なプレーである。日本代表との共通点は多い。メキシコがかねてから「日本サッカーの優良なサンプル」と見なされてきた理由である。
ブラジル・ワールドカップに出場した23人を、所属クラブから見てみる。ヨーロッパのクラブに在籍しているのは、3分の1以下の7人だ。国内でプレーする代表選手が多いのは、今回に限ったことではない。そうしたなかで、1990年から2014年まで6大会連続でワールドカップのグループステージを突破している。世界のベスト16の常連となっているのは、日本が大いに参考にするべきところだ。
ザックになくてアギーレにあるもの
アギーレ監督が2度のワールドカップを経験していることも、代表監督を選定する日本サッカー協会には魅力的に映ったはずだ。
アルベルト・ザッケローニ前監督は、クラブレベルでの実績が豊富な一方で代表監督を務めるのは初めてだった。当初は問題視されなかったザックの経歴は、最後の大一番でクローズアップされる。先のブラジル・ワールドカップにおける采配は、チームを苦境から救い出すには至らなかった。
ブラジル・ワールドカップのグループステージで日本が敗退した直後から、アギーレ監督は新指揮官の本命と言われてきた。それだけに、正式発表は規定路線のようにとらえられているが、そもそもアギーレこそが最適任者なのか?
アギーレと日本サッカーには、これまでほとんど接点がない。国内外での選手のチェックから始めなければならず、チーム作りには時間がかかる。結果が出なくても、「まだ選手を把握している時期だから」といったエクスキューズがまかりとおる。
アギーレには「悔しさ」もない。
ブラジル・ワールドカップで我々日本人が感じた悔しさ、歯がゆさ、痛みは、4年後のワールドカップへ向けたモチベーションの核となるものだ。
それだけに、日本人監督にチームを託すという選択肢があってもいいと、僕は感じていた。
アギーレ監督と洗練された戦術-
日本代表の進化と攻撃的な4-3-3の可変システム
2014年から中南米に位置するメキシコ人のハビエル・アギーレ氏が監督に就任し、2018年W杯ロシア大会へと向かう。
中南米も南米と同じ様に身体能力を活かした攻撃的なスタイルの印象が強い。
アギーレ監督はその印象通り、日本代表メンバーでできるあらゆる攻撃の選択肢を洗練して使うのだった。
アギーレ監督は代表監督の理想像だった!?
前日本代表では選手たちの自己主張が強すぎたのか、監督の戦術を歪めた様に見えた。そのためアギーレ監督は前代表監督でレギュラーだった選手も外して幅広い選手を試し、「戦術を無視するような選手は弾く」と意思表示をしたかに見えた。
よく組織はトップダウン方式と言われるが、監督がまとめ役となり「戦術のための選手」を体現したのである。