●術中にはまった日本代表
日本代表は、カタール代表の術中にはまり、
AFCアジアカップ2019の優勝を逃しました。
後半は押し込む時間帯もあったものの崩しきれず、
一方で前半はほぼ何もできなかった。
日本はなぜ敗れたのか?もう一度、検証しましょう。
ある取材記事を読んでいたら
「カタール代表の日本代表戦の落とし込み記事」をみつけることができました。
『30日、カタール代表は完全オフ。
決勝戦は1日なので、カタール代表に残された準備期間は31日、その1日しかなかった。
31日、カタール代表は、90分間練習。
内容は、ウォームアップ、ランニング、ダッシュ、ボール回し、シュート。
これだけで60分近くが経過。
残された時間はたった30分。
ようやくゲーム形式の練習で日本代表対策が始まった』という記事です。
カタール代表は
『チームを主力組と控え組に分け、控え組は日本代表の動きを完全トレース。
この「仮想日本」に主力組が挑むという構図。
普通のゲームと違うのは何人ものコーチがピッチ内に入り、すぐにプレーを止める』
その都度ポジショニングの指示を出し修正。
カタール代表は、4バックと3バックの2つのフォーメーションを使いこなすチームだが、
この日、主力組は3バックでしかプレーしていなかったようです。
つまり、事前のスカウティングで
「日本代表には3バックが有効」
との分析が済んでいた』ということです。
わずか30分。
だが、その成果は前半如実にあらわれました。
日本代表のスカウティング担当もこの練習は、視察しているはずです。
事前にカタール代表は、3バックで来るということは分かっていたはずです。
●大迫対策と噛み合わせの悪さの利用した「カタール代表」
日本代表は、前半「噛み合わせ」の悪さで苦しみ、
2失点を喫した後、35分辺りで、
大迫勇也(ブレーメン)と森保 一監督がライン際で話し合っている風景を目にした人は少なくないと思います。
コミュニケーションを取り、修正を施した。
南野拓実(ザルツブルク)を中盤に落とし、アンカーをマークさせる。
これにより、柴崎 岳(ヘタフェ)と塩谷 司(アルアイン)は前に出なくても済むようになります。
そして3バックには原口元気(ハノーファー)、大迫勇也、堂安 律(フローニンゲン)が、
3対3でプレスに行った。
4-4-2の守備を4-3-3に変え、かみ合わないミスマッチを、噛み合わせた。
この修正後、前半残りの10分間は、日本の圧倒的なゲーム展開を取り戻した。
見事な修正とも言えるが、一方、準備さえしっかりしていれば、むしろ序盤から実現可能なことです。
カタール代表の布陣は意外ではなく、予想通りだったので尚更なはずです。
35分後の修正は、さすがに遅い、この世界であれば時間が掛かり過ぎです。
Q:そして、カタール代表はミスマッチを生かした攻撃を行う一方、日本はどうだったのか?
しかし、「布陣のミスマッチ」と言うけれど、それは相手方にも生じるワケで、日本側だけに災いするものではない。
4-2-3-1対3-3-2-2(5-3-2)の戦いで、
4-2-3-1が一方的に不利益を被るのなら、
4-2-3-1は世界的にここまで圧倒的なシェアを獲得していないし、
3-3-2-2(5-3-2)はマイナーな布陣の域に収まっていないはずである。
⑲アルモエズ・アリ(アルドゥハイル/カタール)と
⑥アブデルアジズ・ハティム(アルガラファ/カタール)のゴールで
前半を0×2で折り返すことになった日本代表だが、
納得できなかったのは布陣のミスマッチ話だけではありません。
普通ならここがメンバーチェンジのタイミングです。
後半開始から誰かを投入し、流れを変えます。「ミスマッチ」と言うなら、
何故そこで布陣を変更しなかったのか疑問を感じるところです。
A:それはともかく、森保一監督は打つ手がなかったのです
処が、今回の日本代表にはそれがありませんでした。
誰を投入すればチームが活性化するかが見えてきません。
理由は分かり易い。
森保 一監督が、先発組とサブを明確に分け、
交代のカードを切ってこなかったことにあります。
7試合目(決勝戦)から逆算した思考をしてこなかったツケが、0×2とされた後に現れました。
1人目である武藤嘉紀(ニューカッスル)が原口元気と交代で投入されたのは後半17分。
間違いなく遅すぎでした。
日本代表は、その7分後(後半24分)に1点差に迫るが、
塩谷 司に代わり伊東純也(柏レイソル⇒ゲンク)を投入した2度目の交代はなんと後半39分。
さらに南野拓実に代わり乾貴士(アラベス)を投入した3人目の交代は後半44分でした。
リードしている側が行なう時間稼ぎを兼ねた交代ではありません。
交代選手を信用していない点、
アイデアに乏しい点、
判断、反応が遅い点は、
私には疑問でした。
極めつきは終盤、
大迫勇也、武藤嘉紀、堂安 律、乾 貴士(南野拓実)、伊東純也(ゲンク)が
前戦に5枚並んだ布陣です。
守備的MFは塩谷 司がベンチに下がった後、柴崎 岳ひとりだったので、4-1-5(!)になります。
堂安 律と武藤嘉紀をインサイドハーフとしてみなせば4-3-3になるが、
そう解釈するのは好意的というか、無理矢理な話です。
最後の最後になって、
地味だった監督が突如、奇想天外な作戦に出たという印象であります。
非論理的な、とても日本代表をW杯でベスト8に導こうとする監督の采配には見えてこないです。
日本代表の選手のレベルは、だいたい把握しています。
私達は、世界的な評価は各クラブでのプレーを通して明らかになっています。
だが、監督にはそうした物差しがない。
アジアカップで、選手以上に注目されていたのは森保 一監督でした。
しかし、見られているという自覚が、森保 一監督そして日本サッカー協会には、どれほどあっただろうか?
さらに、2022年カタールW杯は、48カ国で本大会を開催する可能性が濃厚になっています。
アジア枠が現行の4.5から、8.5に肥大化すれば、落選の心配はない。
アジア予選突破は、この日カタール代表に対して踏んだようなドジを、2、3回続けても、大丈夫という話になります。
森保 一監督は2022年11月まで務めてしまいそうな雲行きですね。
アジアサッカーもこれ程の監督が集まり始めると監督の「良し悪し」がはっきりします。
アジアカップは、何人かの選手の限界を見た大会でもあるが、一番苦しいのは監督です。
選手に比べて世界的ではないのが一目瞭然です。
●アジア各国の代表監督一覧
イラン代表/カルロス・ケイロス(スペイン)
ウズベキスタン代表/エクトル・クーペル(アルゼンチン)
オマーン代表/ピム・ファーベーク(オランダ)
韓国代表/パウロ・ベント(ポルトガル)
サウジアラビア代表/ファン・アントニオ・ピッツ(スペイン)
中国代表/マルチェロ・リッピ(イタリア)
フィリピン代表/スヴェン・ゴラン・エリクソン(スウェーデン)
UAE代表/アルベルト・ザッケローニ(イタリア)
カタール代表/フェリックス・サンチェス・バス(スペイン)
タイ代表/ミロヴァン・ライェヴァツ(アジアカップ解任)(セルビア)
インド代表/ステファン・コンスタンティン(アジアカップ辞任)(イングランド)
これ程の監督が、アジアに集結し始めている。
森保 一監督が続投するのであれば、長期的な眼で選手選考を行なってもらいたいものである。
●日本代表「個の力で上」。
しかし、カタール代表を上回れなかった要因は何か?
カタール代表は見事だったが、ここまでが限界だったはずです。
セットプレーの練習はまったくしておらず、
日本代表が想定外のプレーをしてくれば対応できなかったのでしょう。
日本代表が、カタール代表を上回れなかった要因としては主に2つあります。
1つは、「修正力」がなかったことです。
森保 一監督は
「守備はミスマッチが起きても最後どうやって止めるか。特に2点目。⑥アブデルアジズ・ハティムが左足(のシュート)をもっていることはスカウティングできていた」
と試合後に語っています。
ミスマッチ、いわゆるギャップが生まれたとき、
ハーフタイムになる前に選手たちで修正できればまた違った展開になっていたはずです。
吉田麻也は
「ボランチの脇で⑪アクラム・ハッサン・アフィフを誰が掴むのか。⑲アルモエズ・アリとうまく入れ替わりながら、誰が掴むのかで1点目も2点目も1回そこを起点にされて失点しています。そこでの臨機応変さが足りなかった」
と語っていることから、何が原因なのかは把握しています。
やはり足りないのは「修正力」でした。
2つ目は、「対策への対策」が何もなかったことです。
カタール代表が、日本代表対策をしてくることは想定内だったはずです。
見事な攻略ではあるが、何も特殊なことはしていません。
にもかかわらず、自分たちの得意な形に固執し、相手の嫌がるプレーがほとんどありませんでした。
サウジアラビア代表戦のようにドン引きするわけでもなく、
攻撃パターンに変化はなく跳ね返され続けました。
日本代表は、ロシア杯でアジア最高の成績を残し、一目置かれる存在でした。
だが、名実ともに王者ではなくなりました。
アジアでも挑戦者として研鑽していかなければならない。
アジアカップで露見した修正力のなさは日本サッカーにおける積年の課題と言えます。
ここの解消なくしてレベルアップは望めません。
少なくとも、2段飛ばしで日本代表を追い越していったカタール代表に当分追いつけないでしょう。