失望した韓国サッカー「アジア王者の夢は潰える」
アジアカップ 2019 1月25日アブダビで行なわれた準々決勝、
韓国代表の試合は、FIFAランキング93位のカタールに0×1で敗れ、ベスト8で姿を消した。
1960年大会以来の優勝を狙うなかでの8強敗退に、
私も失望した。
韓国がやってはいけない「ポゼッションフットボール」
選手個々の良さを引き出せず負けに繋げてしまった。
韓国のパウロ・ベント監督は、
エースのFWソン・フンミン(孫興民)を今大会初めて右サイドで起用。
トップ下にはMFファン・インボム(黄仁範)を入れ、カタール戦に挑んだ。
試合は一進一退の攻防が続くなか、後半に入り韓国が徐々に支配率を高めていく。
同27分には、ソン・フンミンがペナルティーエリア内で相手の守備を切り裂くも、
左足シュートはGK正面を突いてゴールならなかった。
後半30分には、敵陣ペナルティーエリア手前でMFイ・チョンヨン(李青龍)が倒されて
FKを獲得したが、
かつてJリーグのアルビレックス新潟でプレーしたDFキム・ジンス(金珍洙)が
左足で直接狙った一撃は惜しくも右ポストに阻まれた。
均衡が崩れたのは後半33分だった。
カタールのMFアブデルアジズ・ハティム(Abdulaziz Hatem)が、
一瞬の隙を突いてペナルティーエリア後方の約25メートルの位置から左足を一閃。
韓国マーカーの股下を抜けた一撃がゴール右隅に突き刺さり、韓国は先制点を許してしまった。
その2分後、韓国はDFイ・ヨン(李鎔)の右サイドからのクロスを
ガンバ大阪のFWファン・ウィジョ(黄儀助)が押し込んで同点に追いついたかに思われたが、
VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)適用の末にオフサイド判定でノーゴールとなった。
終盤にFWイ・スンウ(李承佑)を投入して反撃を試みたが、
最後までゴールを奪えず。0×1で敗れ、ベスト8で姿を消した。
韓国スポーツ誌は、ボール支配率で「60.3%対39.7%」と主導権を握りながら、
決定打を欠いた結果を「創造性のないポゼッションサッカーは意味がない」と一刀両断した。
しかし、そうだろうか?以前から韓国サッカーのポゼッションは、
隣の選手にパスを繋ぐだけで怖さを感じないと言っていました。
韓国サッカーの良さを引き出すためには人の動きです。
その事を少し話したいと思います。
ポゼッションには「良いポゼッション」と「悪いポゼッション」があります。
日本代表でも同じ事が言えるのだが、日本代表と韓国代表のポゼッションも違う。
今日は、話が長くなるので韓国サッカーに絞って話します。
いくらボールを保持してもチャンスにはつながらず、
時間だけがすぎ、
選手がどんどん焦って行く。
いわゆる「ポゼッションの罠」です。
バルセロナやバイエルン、スペイン代表やドイツ代表を見ればわかるように、
世界のトップにはゲーム支配が結果につながっているチームが存在する。
彼らの場合、むしろポゼッションへのこだわりこそが、
タイトルをもたらした「良いポゼッション」の代表例です。
「走れるうえにパスを回せる」のが王道
昔私は、『走る技術』と言って笑われた。
走る技術って何?
「モダンフットボールは、どんどん走るサッカーをしているのに、
南アフリカW杯以降、日本でもポゼッションという言葉が流行ってしまった。
走ることへの着目度が、日本サッカー界でも格段に落ちてしまった」
「走る技術」のレベルアップは、
日本サッカーでさえ最重要課題のひとつとして捉えなければなりません。
しかし、当然ながら、走るだけでは不十分です。
ブラジルW杯で頂点に立ったドイツを見ればわかるように、
「走れるうえにパスを回せる」チームが、モダンフットボールの王道になりつつあると言えます。
重要なのは、個人戦術
「悪いポゼッション」を「良いポゼッション」にできるのだろうか?
例えばクロスやシュートの際に人がボールサイドに寄ってしまい、
跳ね返りからあっさりと失点することが多い。
試合はドラマチックになるが、どうしてもシーソーゲームになりやすい。
こういう守備の脆さは、私は攻撃だけでなく、
守備に関しても高度な個人戦術を求めていることが関係しているからだと考えます。
例えばイタリアならば、「守るときは味方の斜め後ろに立て」と教えられます。
いわゆるディアゴナーレです。
イタリア人にとって、4-4-2といった“きれいな並び”はあくまで紙の上の話です。
広い中盤のスペースを守るとき、選手が横に並ぶより、
斜めに並んだ方がカバーできる範囲が広くなり、
ボールを奪った後パスを受けやすくなります。
ポゼッションにおける「良い」と「悪い」の差
その考えは、私も同じです。
しかし、マニュアル的に「斜め後ろに立て」とは言いません。
まずは「どうすれば自分が届かない範囲を狭められるかを考えろ」という知恵を落とし込みます。
その応用例のひとつとして、「斜めに立つ」ということを後で教えます。
「前のうまいやつにボールを渡す」
そして、「うまいやつにボールを渡しているか」ということです。
「バルセロナを見ても、バイエルンを見ても、DFラインのボール回しはものすごくシンプルです。
そこから一発のパスを狙うことはほとんどありません。
どんどんボールを動かして、前のうまい選手に渡します。
そうするとボールが止まらないので、前の選手も動き出しやすいのです」
「それに対して、後方の選手が一発を狙ってパスコースを探し、
ボールを持ちすぎてしまうと、相手の守備が整う時間ができてしまいます。
その結果、前にいる選手の足も止まってしまいます。
後ろにいる選手がシンプルにプレーするのは、ものすごく大事なことです」
韓国代表で言えばソン・フンミン(孫興民)であり、
受けた後にボールを運べるイ・スンウ(李承佑)です。
しかし、イ・スンウ(李承佑)の使われ方は、後半15~20分です。
彼は、自分のサッカーができずに良さを出せずに終わってしまったように思います。
また、彼にボールが集まることはありませんでした。
チームとしてだけでなく、誰がどれくらい持ったか、という細部まで見ないと、
ポゼッションの真の価値はわからないということです。
いくらフンメルスがうまいと言っても、クロースやエジルが持つのとはやはり違います。
パスを受ける前に相手の視線を動かす
次に挙げたのが「選手がパスを受ける前に走る距離」です。
相手の組織を揺さぶるには、待ち構える敵の視線を動かさなければならない。
死角が増えれば、そこを突くチャンスが生まれるからだ。
そのためには一定以上の距離を走らなければならない。
「相手の目の前だけで動いていたら、視線は動かない。
あくまで目安だが、3メートル動くより、6メートル動く方がいい。
あとはそれをいかにしつこく繰り返せるか?
パスが来なくても、もう1度動き直します。
自分の体を操れなければ、敵を操ることもできない」
DFが気の利いたビルドアップをしているつもりでも、
そこで時間を食ったら前線の選手が苦労してしまう。
前線の選手は動いているつもりになっても、相手の視野を動かせていなければ効果は小さい。
しかし、韓国代表は、ショートパスで隣の選手に繋ぐだけで展開できない。
DFラインからの楔パスもロングフィードパス。
流れの中でのパスが多く、受け手がミスで失ってしまう。
未だ未だポイントはたくさんあるだろうが、この2点を改善するだけで、
「悪いポゼッション」は
だいぶ改善されるはずである。
もしかしたら、このエッセンスはポゼッションの話に限らないかもしれない。
韓国サッカーの質をさらにもう一段階上げるためには、
「~しているつもり」というプレーを減らしていかなければならない。
課題は変わらず。隙間へつける仕組みがない
韓国代表に限っては、ボールを持てば果敢に仕掛けてくるカタールだったが、
韓国代表は、ポゼッション攻撃について進歩はみられていない。
最大の問題は相手の守備ブロックの「隙間」にパスが入らないことです。
前に述べたように「受け手の動き」とDFラインでポゼッションしていて
「巧い選手」にボールが入らないことです。
ロシアワールドカップでの日本代表の香川真司のように
狭いスペースでもフリーになってパスを受けて失わずにさばくことができない。
韓国は、サイドバックの進出など周囲のポジショニングによって、
オートマティックにソン・フンミン(孫興民)を
左のハーフスペースでフリーにする仕組みを持っている。
しかし、韓国代表の場合サイドからの攻撃に偏りがちで、
相手DFの背後を取り、クロスからの攻撃はファン・ウィジョ(黄儀助)パスは入らない。
結局、相手を背負っていても受けて失わない、
「的の大きい」ソン・フンミン(孫興民)が頼り
という状況はまったく変わらない事がわかりましたか?
今回の韓国代表には、私個人期待していました。
パウロ・ベント監督が大型の韓国代表を操り、
攻撃的ポゼッションからソン・フンミン(孫興民)、
ファン・ウィジョ(黄儀助)を活かす、
攻撃サッカーを展開できるか?
そして、トップ下のMFファン・インボム(黄仁範)は
SBイ・ヨン(李鎔)のクロスを活かせるか?
また、相手DFを切り裂く鋭いドリブルを売りにする
イ・スンウ(李承佑)の活躍を見たかった。
しかし、またしてもアジア王者にはなれずに大会を去っていきました。