【戦士鍛錬場:右田 良子・倉本 華】

「剣筋はまだまだだし、避ける動作も重いけど、砂川さんの言いたいことも確かにわかるかな」

 椅子に座ってポカリスエットで喉を潤した後、右田 良子がこう口にした。午前中の戦士鍛錬場、本日は2期生全員と結構な数の1期生も鍛錬に訪れている。鍛錬場に入ってきた時に倉本 華がいるのを見つけた右田は声をかけて一緒に鍛錬を行った。先日砂川 憲剛から指導してほしいと依頼を受けたからだ。今まで右田と鍛錬を行った倉本は目の前のベンチで死んだように伸びている。疲れの限界を超えているようだ。鍛錬を開始した時、右田には砂川が倉本を推す理由がわからなかった。2期生全体から見ても倉本の剣筋や動きは正直最下層に近い。ただ、鍛錬を続けると倉本の秘めたる才能に気づく。右田の攻撃に対する反応が通常よりも1テンポ早いのだ。これに気づいたのは自分が実際に相対しているからで、外から見ている分には気づかなかっただろう。この時右田は砂川の見る目に感服する。

「そのままでいいから聞いて。倉本さんはこのまま避ける人を続けると思うけど、避ける人にも2種類いるの。考える人と感じる人。敵の動きに応じて考えて行動するか、敵の動きなど関係なく感じて行動するか。倉本さんは感じて戦う素質があるから、考えて動くとどうしても動きがぶれてくるの。だから今後は考えるのではなく感じて動くようにして。慣れるまでは難しいけど、慣れてしまえば2期の最強レベルになれるかもしれないわ。わからなくなったらいつでも相談に来ていいからね。じゃあ頑張って」

 右田のアドバイスを聞いて、お礼を言いたい倉本だったが、体が動かない。去っていく右田の足跡を聞きながら、後日きちんとお礼を述べようと決意する倉本であった。