【甲玉堂:堀越 希巳江】

「堀越さん、注文の品届いてますよ」

「ありがとうございます」

 店員から声をかけられた堀越 希巳江は笑顔で返事を返した。ここは上通りにある文具店『甲玉堂』。熊本で文房具を買うといえば真っ先に上がる店舗であり、本日もたくさんの客で店内は大賑わいである。午前中はいつものように罠解除士鍛錬場で鍛錬を行っていた堀越は、注文していた文具が届く予定日だったので、『甲玉堂』にやってきたのである。堀越は物作りに造詣が深く、道具にもかなりのこだわりがある。品揃えが豊富な『甲玉堂』ではあるが、在庫がない商品はお取り寄せとなる。堀越の場合、かなりレアな道具を使用しているので、在庫がないというのは売り切れているというわけではなく、そもそも通常入荷をしていないような商品となる。そのような商品をきちんと仕入れてくれるのも『甲玉堂』がクリエイターから愛されている所以である。堀越は店員から注文していた商品を受け取り、代金を支払う。そしてレシートをもらった後で店員に話しかける。

「そういえば、また取り寄せて欲しい商品があるんですけど」

 おそらく『甲玉堂』にすらも在庫がないと思われるマニアックな商品について店員に尋ねると、やはり取り寄せになるとのことで、堀越は注文票に必要事項を記入する。これで商品が入荷した際には携帯に連絡が入るようになるのである。

「それではよろしくお願いします」

 こう口にしながら注文票を店員に渡し、堀越は『甲玉堂』を後にする。この後まだ昼食を食べてなかった堀越は『ロッテリア』で軽く食事を済ませ、『まるぶん』、『長崎書店』と本屋巡りをした後、黒髪へと戻ったのである。