【魔術師試験場:松島 明日香・河内 広奈・坂川 麻緒】

「さて皆さん、本日は2次試験4日目になります。本気で合格したい人はなるはやで課題クリアできるように頑張りましょう!では鍛錬を開始してください」

 受験者全員に向かって松島 明日香が元気に鍛錬開始の合図を行った。ここは魔術師試験場。本日は2次試験4日目である。昨日の時点で魔術師の課題クリア者はまだ1名しかおらず、なかなかその次のクリア者が出てこない状況である。ちなみに僧侶と罠解除士は昨日までに2名ずつの課題クリア者を出しているので、松島としては早めに2人目の合格者を出して、何とかクリア人数で追いつきたいところである。

「うーん。出ない」

「でないねえ」

 なかなか発現しない光に対して河内 広奈がぼやき、それに坂川 麻緒が何となく返事を返している。この課題は指先に光を灯すというどうすれば良いのかが分かりにくい課題である。受験者たちは今自分が行っている感覚が合っているかどうかもわからない状況であり、どうすれば指先に光が灯るのかは、実際に光が灯ってみないとわからないのである。なので、一度その感覚を覚えてしまえば、その後は難なく何度も同じことを行うことができる。これは今後の魔術師呪文にも通じるところがあり、爆発や、大爆発、猛吹雪、TNT爆発など、習得するまでに非常に時間がかかるものではあるが、一度修得してしまえばその後は難なく呪文を唱えることができるのである。

「うーん。出ない」

「でないねえ」

 全く同じセリフを河内と坂川が繰り返している。聞いているとどうもある程度のタイミングで何度も何度も同じセリフを吐いているようだ。だが実際にこれだけ頑張っても光が灯らないので、ぼやきたくなる気持ちもわからないでもない。なので、松島は特に注意することなく、激励の声かけだけを行ったのである。この後も時間まで全員鍛錬に集中していたが、結果的に本日も魔術師で課題をクリアできたものはいなかった。