2023926日(火)

【罠解除士鍛錬場:大塚 仁・富田 剛・四谷 博美・内村 修・村島 華蓮】

「見せてやればいいんじゃないですか」

「うむり」

 軽く笑顔を浮かべて発した大塚 仁の言葉に、真剣な表情を浮かべて富田 剛が返した。ここは午前中の罠解除士鍛錬場。本日も多くの罠解除士が鍛錬を行っている。本日暇つぶしに鍛錬場にやってきた富田だったが、流石に罠解除士としては有名人なので、稽古をつけて欲しいと続々とお願いに来られたので、一人一人丁寧に対応していた。そのメンバーの中には現存の罠解除士での序列でNo.3No.4No.5の四谷 博美、内村 修、村島 華蓮も含まれている。ちなみに現在の序列のNo.1は大塚であり、No.2は本日探索に出ている大塚 瀬名である。富田が指導するのはどちらかといえば概念的な部分であり、これを身につけると身につけないとでは特に亜獣探知能力に大きく差が出るのだ。かなりの人数を富田が指導し、一旦休憩することにする。休憩の間に色々な話をしながら、体力を回復させる。話を進める中で若い罠解除士達にある疑問が生まれる。富田が引退したのは30年ほど前のことであり、その時はまだ迷宮も第2迷宮までしか存在していない。罠解除装置もその頃までは現在の30レベルではなく、10レベルまでだったと聞いているのだ。と言うことは富田は一体罠解除装置の何レベルまでを解除できるのであろうかと言うことである。そういうことで、富田は現在実際に罠解除装置に向かっているのだ。富田は罠解除士の前に立ち、レベルを26に設定した。その瞬間に周りの罠解除士からどよめきが起きる。大塚を除けば、現在罠解除士達が解除できる罠解除の最高レベルは19であるし、レベル25以上の罠を外すには先取りというテクニックが必要であると聞いているからだ。富田の目の前に罠が出現し、大きく息を吐いて富田がその中に手を差し込む。すると、今まで見たことのないような手の動きを見せ、次第に罠が縮小し、罠が消滅した。

「おおー」

 罠解除士鍛錬場に歓声が巻き起こる。実は全員富田が本当に解除出来るとは思っていなかったのだ。富田は得意げな顔で罠解除装置から戻って来ていたが、笑顔を浮かべた大塚が両手を口に当てて言葉を発する。

3030!」

 そう言われたので、富田は軽くため息をついた後、再度罠解除装置の前に立ち、レベルを30の罠を設定した。

「三重さーーーーーーーーーん」

 罠解除に失敗し、まるで好きな子がメガネを忘れたというアニメのオープニングで三重さんから顔を触られて、天に昇っていく小村くんのようなイメージで富田は吹っ飛ばされたのであった。