Michel Legrand『At Shely's Manne-Hole』 | kumac's Jazz

Michel Legrand『At Shely's Manne-Hole』

 このアルバムのジャケットを見たときに、最初は、つまんない幾何学模様で、なんの情緒も感じないと思った。そして、考え事をしていたある時に、ふとこのアルバムが眼に入ってきて、なんのこともなく「マンホール」という言葉が浮かんできた。「えっ!マンホール」=「シェリーズ”マン”・ホール」=「マン・ホール」。そうか!そういうことか、でした。そう、ジャケットの二色刷りの地味な丸い幾何学模様は、マンホールの形なんですね。人知れず、いつも、必ずそこにある、マンホール。シェリー・マンのライブハウスも、そんないつもジャズのライブを聴きたくなると、かならずそこならやっている、って感じですかね(深読み)。でスペルが、シェリーズ・マンホールの「Hall」ではなくて、マンホールの「Hole」ってとこも、嬉しいです。これ、フランスのエスプリなんでしょうか。
 iTunesは、このアルバムを認識して読み込むときに、ジャンルを「POP」とした。はなはだ遺憾である。この作品は、誰がなんと言おうと(聴けば、何人であろうが言う分けはない)、ジャズそのものである。そして、ジャズの持つ、即興性を十二分に堪能できる。それは、今、この場でしか聴けない演奏だからである。CDを鳴らすと、まるで客席にい聴いているかのような臨場感がある。この作品の一番の魅力は、まるで生演奏を聴いているような気分に聴くものをさせるってことだ。ピアノのミシェル・ルグラン、ベースのレイ・ブラウン、ドラムのシェリー・マンそれぞれが、相手の音に五感を集中させ、うめき声と共に、楽しくかつ張りつめた、演奏を繰り広げる。
 とっても、スイングして乗れるピアノ・トリオアルバムである。秀逸である。3人とも、本当にジャズを楽しんでいることが、伝わってくる。ミシェル・ルランのピアノは、頭の中の音のイメージを、自由自在に表現する。だから、緩急があり、いろんな音の仕掛けがあり、1曲1曲ごとに、3人の仕掛けあいが面白い。スタンダードな、ピアノ演奏ではけっしてないけれど、聴いて損はしない。十二分に楽しめる。そして、レイ・ブラウンのベースは最高である。どっしりとして、美しい。
 ミシェル・ルグランがハミングで唄う「マイ・ファニー・バレンタイン」は、一度是非聴いて欲しい。
 kumac的評価 スイング感5 創造性3 歴史的価値3 興奮度4 合計15(20点満点)
ミシェル・ルグラン, レイ・ブラウン, シェリー・マン
シェリーズ・マン・ホールのミシェル・ルグラン