HDに埋もれていた一本。空容量確保の為に鑑賞です(>_<)
タイトルから歌舞伎町辺りの水商売系の物語かな?と予備知識なく見始めたところ予想外に面白く物語に引き込まれていきました。
主演の中村蒼、主演映画はあまり見掛けた事がありませんでしたがイメージとしてはドラマ「本棚食堂」で演じていた漫画家そのままの、温和で優等生的な印象が強い俳優さんと感じていました。そんな彼がイメージチェンジを図って出演した作品なのかなとチラッと思えます。
大学生の修(中村蒼)は故郷を離れ東京で一人暮らし。学費や家賃は片親の父に任せきりでなんとなく学生生活を送っていた。ある日、大学のIDカードが使用出来ず学生課に問い合わせると学費未納の為に大学は除籍処分となっていることを知らされ、部屋には不動産屋が訪ねて来て家賃未納で期日までに入金が無ければ強制退去と告げられる。驚き実家に舞い戻った修が見たのは差し押さえられた実家で、そこにいる筈の父親の姿も無かった。
入金期日が過ぎ、外出中に部屋の錠前は差し替えられ、荷物は担保として取り上げられた修は瞬く間にネットカフェ難民となってしまった・・・
事態の悪化は全て失踪した父親が悪いのだと毒づく修を見ていて「このクソガキ!ハタチ過ぎてて親に養って貰って当然と思ってんじゃねえよ!」と思わせる辺りは中村蒼の演技力のお陰なのかな?と思わせます。
配達証明の郵便物を確認もしない世間知らずな修がネットカフェ難民→ホスト→タコ部屋→ホームレスへと転落していく様や、でも落ちる度に修が変化し成長していく描写が気に入りました。
変化と云えばホスト修の初めての客の茜(大塚千弘)の変貌ぶりも面白かったです。初めはホスト狂いのレイ(山本美月)に誘われ、少しだけ非日常を楽しもうとした地味な茜が、あっと言う間にそれを日常だと捉え出し容姿は勿論、考え方まで変わっていく様はリアルで驚きでした(>_<)
先輩ホスト順矢役の青柳翔や山本美月、中尾明慶など共演者たちもなかなかいい感じで、川崎ソープ街を笑顔で走り出すシーンは特に印象的でしたね。
ただ共演者で彼等よりインパクトがあったのが金子ノブアキ。この人ホントはミュージシャンでドラマーだとか(≧∇≦)
その割にはこの作品で演じた、近寄りがたい雰囲気を漂わすホストクラブ店長から朗らかで温和な好青年まで演じられるキャパが広くて子役の経験があるとは云え、なかなか凄い俳優さんだなと認識しました。最近、彼が内田有紀と共演しているドラマを見ていましたが同一人物だとは暫く気づきかなかった位です。
それからホームレス鈴本を演じた井上順。もう、伊達に芸歴は長くはないよ!って感じの安定、安心感のある演技は見ていて暖かくホッコリとさせて貰えました(≧∇≦)
恥ずかしい話ですが自分も修と同じ年頃に住所不定でタコ部屋に転がり込んでいた事があります。真夏の厳しい暑さの中、マズイ弁当を持たされ汗だくになりながら土方仕事を黙々とこなす自分の傍を歩く身綺麗なサラリーマンを見て思ったのは
「あぁ、平凡って幸せだったんだなぁ」でした。住所が有り定職がある当たり前の事が如何に幸せかをその時に痛感しました。そんな思い出も手伝ってこの作品にはかなり感情移入出来て楽しめました。
「そいつはもう、終わっている」と云うセリフでこの作品は幕を開けますが、主人公の修を見ていれば「人間は人生をそう簡単には終わらせられない」と思える作品でした(≧∇≦)
「東京難民」 オススメ度 ★★★