鬼のような顔をしたオヤジさんは、
『リキは、反省するまで飯は抜きだからな。そのまま正座してろよ。お花は、俺が預かるからな。イト、リキが正座をやめないか見張っていろよ』
イトは、黙って頷いた。

しばらくオヤジさんは、バタバタと何かを探すように、家中を歩き回っていた。
それからオヤジさんは、ひまわりと一緒に家を出ていった。

オヤジさんが、家から出ていったのは、確認しなくても分かっていた。
しかし二階のふたりは、しばらくそのまま黙ったままだった。

何を言えばいいのか。
黙っていた僕を、兄ちゃんは怒っているだろうな。
そんなイトを思ってか、リキが言った。
『イト。なんか食べてこいよ』
『兄ちゃんが食べないなら、僕も食べないよ』
リキは、自分の腹をたさえながら、イトに苦笑いで言った。
『そっか、じゃ一緒に腹を鳴らしてようぜ』
イトは、決意したように聞いた。
『兄ちゃん。なんで本当のことを言わなかったの?』
『そんなのは決まっている。お前がまた泣くだろ?』
『でも、兄ちゃんは悪くないって、僕が言わなくっちゃ誰も知らないんだ。』
『これでいいんだ。イトは黙っていればいいんだ』
『うん』
イトはリキの隣に、正座で座った。
それはイトなりの、リキへの懺悔のつもりだった。

それから、太陽が空の真ん中に昇って来た頃、リキとイトの家のなかは、影ができてきた。
日陰で暗くなったら、リキが言った。
『ひまわりは、俺達だけの物にしたかったな?』
『そうだね』
兄ちゃんは、いい人すぎる。
僕が両親と別れた時に固めた、もう動かない心臓が解けてしまいそうだ。
心臓が、鼓動が聞こえそうだ。