リキの生唾をのむ顔に、イトは動揺した顔でひまわりを確認した。
ふたりは、言葉がでなかった。

リキとイトは、オヤジさんの目の前に正座させられた。
『これは、なんだ?』
リキは、大声で答えた。
『お花』
動揺したのは、最初だけで、リキは何かを決意したかのように冷静だった。
『それは見れば分かる。何でそんな高価なものが、俺の家にあるんだ。お前達の給料を合わせたって買えるもんじゃないだろ』
オヤジさんの声は、いつもと全く違っていた。
これがオヤジさんが、怒っている声なのだと、イトは震えた。
『俺が買ってきたんだ』
そのリキの答えは、イトは理解出来なかった。
意味が分からない。
リキは、真っ直ぐにオヤジさんを見て、嘘をいった。
『イトは関係ない。俺が買ってきたんだ。俺のひとりの責任なんだ』
兄ちゃんが、僕を助けてくれている。
そんな冷静が、オヤジさんの怒りをかう。
『ひまわりが、そんな安いもんか』
『じゃ、俺が盗んだて言えばいいのかよ』
睨んだリキの頬に、オヤジさんの手が当たり、その強い音で反対の頬も叩いた。
リキの体は、オヤジさんの力で押し入れまで転がった。
その音に、イトの心臓は痛いほど締め付けられた。

オヤジさん、違うんです。
すべて僕が、やったんです。
兄ちゃんは、僕をかばっているんです。どうか、僕を許して下さい。
お願いします。

イトの口からは、言葉は出ない。
頭のなかでは、何度も繰り返す。
しかし、口から出ることはなかった。