アルバム2枚はむしろ長寿の方(暴論)


 イングランドのロックバンド•Marsupilamiが1971年に発表した2ndアルバム。情熱と静謐とのギャップがクセになる作品だ。


 1968年にイングランド南西部の町トーントンのR&Bバンド•Levitationから分離する形で結成。中心メンバーはボーカル Fredとキーボード LearyHasson兄弟。バンド名はベルギーの漫画家アンドレ・フランカンが創作した豹のようなキャラクターに由来している。1969年のワイト島音楽フェスティバルのオープニングを務めたことで有名となる。その後トランスアトランティックレコーズから1970年にデビューアルバムをリリース、翌年に本作を発表した。ただ売れ行きが芳しくなかったのか、この2枚を残して1973年辺りには解散しているようだ。


 フルートを核とした静けさを基調として繰り広げられるクラシカルでエキゾチックな展開が魅力的。クールかつ抒情的なフルートと素朴なボーカルとか作り出すハーモニーやユニゾンが何とも心地よい。サイケ感溢れるメロトロンは、作品に妖しさを与えてこの静寂にさらなる深みを付加している。ドラムやベース劇的に変化しながらも静寂を壊さずに曲全体をしっかり支えており、楽器全体としてインパクトこそあるが目立ちすぎないパフォーマンスを主としている。


 とりわけトラック3 "The Arena" は表題曲だけあって素晴らしい。ヒステリックなコーラスから始まり、フラッターを多用した鮮烈なフルートにスローテンポで民族音楽的なパーカッションとサイケデリックなキーボードが幻惑的な世界を演出する。途中に入るキーボードとフルートによる山彦のような空間的奥行きを感じさせるアプローチも強烈。かと思ったら静寂を切り裂くようにエッジを効かせたギターを響かせるリズミカルでハードな展開であったりと、様々なアプローチが披露されている。次のトラック4 "Time Shadows" もフリーダムなフルートやサックスのアンサンブルが味わえておすすめだ。


 熱狂的な激動や挑戦的なアプローチを盛り込みながら、根底の空虚な静寂感はキープされており一種の神秘のようなものを含んだ独特な一枚だ。この不思議な凄みは是非とも聴いて体感してもらいたい。