検査結果「不適正」を受け取る | 埼玉県北本市の設計事務所 久保田篤正建築空間工房のブログ

検査結果「不適正」を受け取る

「一般社団法人埼玉県浄化槽協会」より浄化槽の検査結果書がクライアントの元に郵送にて届いたのは先々週のこと。

 

昨年の秋に住宅をお引き渡したクライアントから金曜の夜8時半に携帯電話に連絡をいただく。浄化槽の検査書類が郵送で届き、判定結果が「不適正」であることを不安な口調で告げた。

 

不適正の理由として「流入経路に排水の一部が接続されていない。」と明記されていると云う。

 

会合での酔いが一挙に醒めて、血の気が引いていく・・・。

 

明朝に検査結果書を受領するため伺うことを告げ、施工業者に連絡し考えられる可能性を協議するが、見当もつかず眠れぬ週末を過ごし、翌週の月曜に浄化槽協会に連絡し、その週の金曜に再検査となった。

 

顛末はこういうことだった。

 

検査員は外から声をかけてクライアントに水を流してもらい、すべての水栓からの排水が浄化槽に流入しているかを排水桝を確認し検査を行う。

 

この度の住宅は、ご時世もあり玄関ホールに手洗い器を設置していた。

 

 

手洗器からの放流が確認できなかったと検査員は云う。

 

自動水栓であり、1回流しただけの水量はごくわずかなことに加え、他の水廻りから汚水桝までは遠く離れ排水管が緩勾配でもあり汚水桝までの放流に時間がかかり確認に至らなかったのであろう。

 

検査員は、玄関付近に設置されていた雨水桝の接続しているのではないかとの想像で「不適正」としていた。

 

自動水栓に数回手をかざし、下水管への放流の確認と相成った。

 

再検査までの1週間、この場に立ち会った設計監理者、工事施工者、水道業者は御協会から「手抜き工事」の烙印を押されクライアントからの信用が地に落ちたこと、不適正という重大な結果をクライアントに通達する前に、設計者、施工者に確認の連絡が何故ないのか、30代半ばと思われる検査員にねちねちと大人気なく恨み節を繰り返してしまう。

 

仕舞いには、「この建築見てごらんよ。良い住宅だと思わない?手前味噌だけど、これだけ手間をかけて創った建築がそんな手抜きをする訳ないでしょうが。」なんて言葉を辛辣に投げかける。

 

最後に深々と長い間頭を下げた検査員の肩は震えていた。

 

嫌な気分がまた1週間続くこととなった。

 

間違いは誰にでもあり、私自身も恥ずかしい間違いでたえず頭を下げている。

その都度、現場や職人の皆さん、建築に関わる多くの方々に助けられ建築設計の業務に携わっている。

 

責めを負うは、検査員ではなく協会組織の問題であろう。

 

疑わしきを「不適正」と判断させ、瑕疵建築である旨をクライアントへ直接郵送させるシステムに大きな問題があるのだ。

 

検査結果書には検査員のフルネームはあるものの、理事長の氏名は記載されていない。

 

建築業界の隅っこに生息する建築士の遠吠えは御協会の理事長様に届くことはないだろう。

 

そしてまた嫌な気分がぶり返す・・・。