かじかじ魔 | くじら座のタウ

くじら座のタウ

ここは城本朔夜が運営するブログです。主に活動情報をお知らせしています。

くじら座のタウ

くじら座のタウ

くじら座のタウ



おそらく多くの子犬がそうであるように、我が家のくうも例外にもれず「かじかじ魔」だ。
子供の頃に大型犬を飼っていたので、覚悟はしていた。だけどこんなに酷かっただろうか?
と正直辟易してしまうほど、くうの「かじかじ」は酷かった。

彼女は、好奇心の塊そのもの。
目に入ったものならなんでも兎にも角にも口に入れてみる、というのを信条にしているようで、
あらゆるものを彼女の前から排除する作業にまずは追われた。
市販されているビターアップルとかいうなめると苦い、かじり防止のスプレーなんかは、全く役に立たず、むしろ好んでなめていたくらいだ。
とはいうものの、好奇心は賢さへつながる大切な資質だとも思うので、無下になんでもとり上げるのもどうかと思う。
仕方なく、彼女のためにいくつかのものは(ちょっと古くなった絨毯やら、相棒手作りの木製の台とか)
生贄に捧げる羽目になった。
それでも、物の破壊だけならたかが知れている。幸いうちは居間の続きで完璧に窓ガラスで仕切ることのできるちょっとした小部屋があるので(屋根付き壁付きのベランダ的な場所と思ってください)そこに隔離してしまえば、その中にあるものはどうぞ煮るなり焼くなりご自由にしていただいて大丈夫だからだ。

困るのは、手、足、腕、肩、いたるところにめがけてやってくる「甘噛み」攻撃だ。
子犬といえど、犬が本気で噛みついてきたら、流血必至であろうことは確かなので、彼女のそれは、紛れもなく彼女なりにやさしく噛みつく「甘噛み」なのだが、子犬の乳歯はニードルさながらに尖っていて、ちょっとした勢いで飛びついてきただけで、たちまち腕がみみず腫れになる。

甘噛みゆえに子供たちからは、あっという間に嫌われた。
「可愛いんだけど、痛いからヤダ」
犬を飼うことに慣れていない相棒も「かわいいんだけどねぇ……」
隔離された小部屋の窓越しには、「かまって欲しいオーラ」をまとった彼女。
すぴすぴと小鳥のようにはかなげな音で鼻を鳴らす。
哀れな彼女を見ていられず、決死の覚悟で会いに行く私。遊びに行く、というよりも戦いに行く、というのが当たっている。
が、十数分後には新たな無数の傷を腕に負い、あえなく撤退を余儀なくされる。
その繰り返しだ。

家族みんなに可愛がられるためにこの子を飼ったのに、この現状は悲しすぎる。
早くなんとかしなくては。
「甘噛みをやめさせるには」
ネットの海から情報をさらえば、色んなことが書いてある。

マズルを掴んでダメだと叱る。
耳に噛みつく。
噛まれた手を喉の奥へオエッとなるまでつっこむと嫌がって噛まなくなる。
噛んだ瞬間、大きな音を立ててびっくりさせる。エトセトラ。
あらゆる方法をやってみた。が、効果なし。どれも、むしろ逆効果。
彼女は豪胆。そしてプライドは結構高い。どんなにしかっても怖がらないし、痛みに強いし、むしろ挑発されたのだと思い、更に興奮。鼻にしわを寄せてさらに激しく噛みついてくる。

昔の淡い記憶をたどり、子犬ってこんなに噛みつくものだったっけ?
思うことしきり。
確かにいくつかのぬいぐるみはボロボロに破壊され、警察犬ごっこ(腕にタオルなどをぐるぐるに巻いてそれに噛みつかせ、ぶんぶん振り回す)をよくしたものだったが。

一ケ月ほどは真剣に格闘したが、あまりの困ったちゃんぶりに、「きっと時が解決してくれるだろう」と諦めムード。
徹底することにしたのが、噛んだら「痛い」「ダメ」と言いながらその場を即座に撤退する、というもの。いわゆる無視、というものだ。
この方法は、結構色々なところに書いてある。遊んでほしい犬からすれば、無視ほど堪えるのはないらしく、続けていれば噛まなくなる、ということらしい。
効果は薄い。と思われた。どんなに無視をしようが、次の時には、変わらず彼女は噛みついてきた。

が、それがここのところ功を奏してきた。
噛むには噛むが「あら、あなた、少しわかってきたんじゃない?」と思わせる行動が、大分見えてきた。
その行動とはこんな感じだ。
遊びに行くと、最初は穏やか。(これも成長。はじめはとにかく噛みついてきたから)

身体を撫でたりしていると、そのうちなんだか噛んでくる。

私は即座に「痛いよ」「ダメだよ」と言いつつその場を立ち上がり、噛まれる対象の腕を後ろに隠しつつ、後ずさり。
と、彼女は一瞬固まる。あれ?どうしたの?良いう感じ。

その後即座に近寄ってきて、足を噛もうとしたり、飛びついて来たりする。
それでも「痛い」「ダメ」と言いながら後ずさり、さようならとばかりにその場所を去ろうとする、と。
初めての時は驚いた。何が起こった?と思った。
彼女は、ワンワンワォォォォオン!と吠えはじめたのだ。
それでも黙って見つめていると、再び噛もうと近寄ってきた。だめだと言われる。噛めない。ああもう、フラストレーションがたまる(のが手にとるように伝わってくる)再び、ワオオオオオンと吠えてみる。

噛んじゃいけない、っていうことが伝わったんだな、と思った。
何だかすごくうれしかった。
「遊ぼうよって言っているだけなのに、なんでだめなの?嫌がるの?」
そんな言葉が聞こえた気がした。
私は「それじゃあ、これで遊ぼうか」
近くに落ちていたキリンのぬいぐるみを手に取って、彼女の目の前で振ってみた。
彼女は、喜んでぬいぐるみに飛びついてきた。

最近は、そのやり取りが結構板についてきて、吠えるまでもなく、自分からおもちゃを持ってきて誘うように私の近くをうろちょろしたり、おもちゃを私に押しつけてきたり、おもちゃを目の前に落としつつ、お手をしてきたりする。
若干、人間の肉の噛み心地は良いようで、遊んでいる途中でどうしても腕を噛みたがる癖は残っているが、格段に彼女と遊べる時間が増えてきた。

犬のしつけも人間と同じだな。
即効性を求めちゃいけない。信じたこと(大して信じてはいなかったが)を淡々と長く続けることだ。

本当にもう、最近のくうは可愛くてしようがない。

多分この先の記事でも毎度のようにつぶやくだろうが、私はくうにメロメロだ。
やっぱりしばらくは、犬ブログになってしまいそうな予感がしている。











そして……。
子犬の噛みたい欲求というものは、例えるならば、少年の性欲みたいなものじゃないかと思う。
噛みたいけど(やりたいけど)ママがダメだって言うから(彼女がダメだって言うから)噛めない(やれない)。そんなシチュエーションに置き換えて、にやにやしている私は変態?