8月8日(金)~9日(土)槍ヶ岳登山 一日目は上高地から、横尾を経て、大曲より水俣乗越に上がり、東鎌尾根を登る。

ヒュッテ大槍泊。

 

5時過ぎの上高地BT タクシー相乗りのおかげで早く到着することができた。

河童橋から、まだ霧雨が降る。穂高連峰も雲の中。

ふりかえって、焼岳も見えません。

淡々と明神通過。

徳澤に到着。まだテントも少ない。

霧雨が降り続く。前回は目的地だった徳澤園も、今日は序の口の通過点。

横尾に向かうと青空も見え始めた。

朝日が降り注ぐ、横尾キャンプ指定地。

横尾はターミナル。大勢の人がいますが、涸沢向けが一番のようです。

横尾大橋の奥には屏風岩が光っています。

槍沢ルートに入ると、人はぐっと少なくなる。健脚が時々追い越していく。

一ノ俣を通過。かつてはここから常念岳に上がるルートがあったそうだ。

二ノ俣大橋を渡る。

すっかり晴れました。槍沢ロッジに到着。今日はここまで、という計画が今後は無難。

ペアブランコが揺れている。みんな写真撮っているので、なんでかな、と思ったら、

ブランコの真上に、槍の穂先がのぞいていた。

明るいキャンプ指定地、ババ平を通過。幕営なら、今後はここまでか・・・・

圏谷(カール)の壁をいくつも滝が落ちる。

正面に東鎌尾根が見えてきた。大曲が近い。

大曲。槍沢は直進します。どうしようかなあ、悩んだ結果、計画通り行こうと水俣への登りに突入。

 

水俣乗越に到着。道標付近は人に占拠されて写真が撮れず。先に進みます。

ひと登りで、槍ヶ岳とご対面。大小の岩峰を越えていきます。標高差はまだ600m以上。

北側は晴れてよく見える。

先行する二人を追って。あちこちにはしご、鎖が点在。小ピークをいくつも越えていく。

あと少しでピーク。その先は、

奈落の底に落ちるようなはしごの連続。下りきって、振り返るとこんな感じ。

まだまだ続く。その先に、ラスボスのように槍の穂先が待っている。

北穂、前穂が見えてきた。飛騨泣きの大絶壁。大キレットの長谷川ピークから見上げたのは13年前。

ふりかえって見る西岳と赤沢山、その奥に常念岳が顔を出し始めた。

北鎌尾根がすごい。10年若かったら挑戦しただろうけれど。

2時間過ぎて、そろそろか、と思ったら看板が。「あと200m」山の中の200mはけっして、「もうすぐ」ではない。

ついたー。直前に追い越された三人は、さらに槍に向かって行った。

 

3時半到着。大きく遅れることはなかったが、ヨレヨレのヘロヘロで、明日はどうしようかなあ、という状態。

うーん、平衡感覚がおかしくなりますね。薬師沢小屋を思い出すような平行四辺形の廊下。新設された奥のトイレ洗面棟の入り口は、正しい長方形。

街のカフェのおしゃれなランチメニュー、みたいな雰囲気の夕食。とてもおいしくいただきました。

 

 夏休みの遠征計画第二弾。北アルプス最後の宿題として残っている、東鎌尾根を辿って槍ヶ岳へ。北アルプスのメインルートはほぼ歩き終わり、メジャーなルートとして歩いていないのは、いわゆる表銀座コース。燕岳単独では登頂済み。常念岳から大天井岳、そして西岳ヘは足跡がつながっているが、水俣乗越から槍ヶ岳までの東鎌尾根が未踏。いつか歩きたいと考えていた。北アルプスでは未踏ルートとしては栂海新道が残っているが、時期、コース取り、体力、などなど条件がそろわず未踏のまま。

 最盛期の槍ヶ岳、なかなか混雑しそうだし、近年の暑さから体力的にも厳しい。そこで小屋泊を選択。ホスピタリティの良さで評判のヒュッテ大槍がたまたま休日に合わせてとれたので、初日は東鎌尾根を辿ってヒュッテ大槍まで、二日目に槍ヶ岳を踏んで下山。というプランにした。大混雑必至なので、初日は金曜日としてなんとか混雑回避したのだが・・・

 今年なぜか2回も出かけた上高地行きの反省から、4時過ぎには沢渡着を目指して1時に出発。順調に走って沢渡には4時半前には着いた。バスターミナル下の駐車場も「空」の標示で安堵。しかし、上下段の駐車場の上の段はすでに満車。下の段も7割ほど。支度を整えるうちにもどんどん埋まっていく。人もどんどんターミナルに向かっていく。ターミナルに着くとさらにびっくり。バスチケットの購入列が、大きなターミナル建屋の三分の二周くらいに達している。これは・・・・相当な時間がかかりそうだ。予定のコースタイム8時間近い今日のルートではここでの時間ロスは厳しい。タクシー乗り場に向かうと、配車係の女性の周りに数人がウロウロ。「乗り合いできますか?」と聞いてみると「できますよ。」とのこと。「じゃあ、一人なんですが。」と言うと、「そういう調整はお客さんの方でしてくださいね。」と言われる。かつては、けっこうドライバーさんが取りまとめてくれたりしたのだが。なかなか色々うるさくなっているようだ。近くにいた30代くらいの男女に声をかけると「二人ですが、いいですよ。」と言ってくれた。そのあとも二人連れが二組ほど。そこにULな感じの装備の男性が一人。「いま3人なんですが、ご一緒にどうですか?」と聞くと「お願いします。」ということで「四人そろいました~」と言うと配車につないでくれた。タクシーの待ちは2台、5分ほどで到着。5時前にはターミナルを離れる。「助かりました。ありがとうございます。」と同乗の人たちと会話。男女は、岳沢から前穂を目指すという。大きな荷物なので、「穂高岳山荘ですか?」と聞くと、岳沢にテン泊で前穂をピストンするという。「ええ?重太郎新道を往復ですかあ・・」と驚いて言うと「初めてなんですが、うわさには聞くけど、そんなにすごい道ですか。」と。まあ、よく人も落ちるし、たしかに急な坂ですね。登りも嫌だけど、下りたくない道です・・と。もう一人の男性は気ままな身軽な旅のようで、蝶ヶ岳を目指すけれど、蝶の天場が混みそうだから横尾に張って往復でもいいかなあ。という感じのようだ。坂巻温泉を過ぎると、霧雨がパラパラ。予報では朝の内は雲が多めだが、晴れになっていくはず。

 定額運行で、4人で6000円。バスと同じ運賃で、あっという間に上高地に到着。ありがたや~5時15分。同乗者や運転手に礼を言って、ターミナルへ。身支度を整える人もまだ少なめ。トイレを済ませて、支度を整え、5時30分スタート。河童橋からはまだ岳沢から上は雲の中。小梨平のテン場も殆どテントなし。淡々と歩く。なかなかエンジンがかからず足が重いが、周囲の登山者は皆さん速い。どんどん追い越されていく。45分で明神館。淡々と通過。7時ちょうど徳澤。まあまあタイム通り。ここら辺までは計画通りだった。こちらはテントがちらほら。明日にかけてどんどんテントが増えていくのだろう。大休止ののち出発。横尾に向かうと、新しい新村橋の橋台ができていたり、川の中で工事をしていたり。ここまで歩いてきて、巨大なダンプやショベルカーが見えると、なんで歩いてきたのかなあ、なんて気になるのは当然。すぐ後ろの若者男性が、「あんなデカい車いるよ。それなら、『まいにちアルペン号』ここまで来てくれないのかなあ。」ごもっともです・・・

 8時10分、横尾に到着。ここからは、槍、蝶、穂高へと別れていくターミナルのような場所。人も多い。パトロール隊の詰め所も出入りが多い。おにぎり一つ補給。太陽も出始め、気温が上がって、これから消耗する時間に入っていくようだ。気合を入れて出発。7対3かそれ以上で、横尾大橋を渡って涸沢方面に向かうらしい。槍沢ルートに入ると途端に人の気配がなくなり、道も山道らしくなった。横を流れる沢の音だけが大きく響く。たまに後ろから足早に近づくファストハイカーが追い越していくだけ。

 45分で一ノ俣。かつてはここから一ノ俣谷を遡行して常念岳に通じる道があったが、荒廃し廃道に。10分ほどで二ノ俣。さらに30分で槍沢ロッジへ。かなり疲れてスローペースに。ロッジ直前、親子と思われる女性二人に追い越され、後を追う。9時50分。槍沢ロッジ着。大休止。大きな遅れはないが、予定より早くはない。この先の行程をどうしようか、と考え始める。槍沢をつめていくのと、水俣乗越から東鎌尾根をゆくのは、時間的には大きく変わらない。疲労度で考えると、水俣乗越への登りで頑張った後に、緊張感のある東鎌尾根はリスクが高い。明日の下りに東鎌尾根で降りてくるのもアリだが、やはり、槍に向かって東鎌を登るコースで行きたいなあ。大曲で決断することにしよう。同じテーブルの隣からいい匂いが漂ってくる。隣に座っている男性が小屋の食事メニューのカレーを食べていた。富士山(いやいや、ここでは槍の穂先だろう)のような山型に盛られたライスにルウが添えられている。おいしそう。目の前のテーブルに座っていた若い男性二人は、まるいグラスを手に戻ってきた。これは・・・『かほ』さんのユーチューブでも紹介されていた。レモンスカッシュですね。それにしても、カレーは2000円、レモンスカッシュは800円ですって。いいお値段。

 荷揚げポイントのヘリポートの隅に木のブランコが作られていた。若者たちが記念撮影をしているが、ブランコだけを撮っている人もいる。出発するとき、前を通ったらそこにいた男性が「槍が見えるんですよ。」と教えてくれた。なるほど、背後の梢のぽっかりとあいた穴の中に槍の穂先がのぞいている。いよいよ来ましたねえ。

 出発して少し歩くと、「槍見・・」と書かれたポイントがいくつか。見上げるとすぐ前上に岩峰が聳えていてまるで槍の穂先のようだが「さすがにこれは違うでしょ。」とツッコミを入れながら歩くが、実際には槍の穂先が見えるポイントだったのは下りで分かった。30分でババ平。キャンプ地管理の小屋など設備が整っていた。この先で、長野県の遭対パトロールさんが二人追い越していった。

 11時40分 大曲、水俣乗越の分岐に到着。リミットと考えていた12時よりは早く着くことができたが、結構体力的にはいっぱいいっぱい。さて、どうしようか。水俣沢の石の上でさっきのパトロールの二人が休んでいる。乗越までは400mの登り1時間強。それから小屋までは多く見て2時間。遅くとも4時前には到着したい。がんばって予定通り行ってみよう。

 沢沿いと森の中を行ったり来たりしながらの急登。約1時間登ってそろそろ上が見えてきた、という頃に二人の若者が追い付いてきた。幕営装備。西岳に行くのかな。1時過ぎ、乗越に到着、ヤレヤレ。北側がよく見える。正面は針ノ木岳だろう。真下に高瀬ダムの湖面が見える。右隅は燕岳か。吹き抜ける風が冷たくて一気に体が冷える。上着を着ているとあとから三人組が登ってきた。さらにそのあとから二人の男性。若者とその師匠、という感じの組み合わせ。風をよけ岩陰にいたが、それぞれの聞こえてくる話からは、最初の男性二人は西岳へ向かう、三人組はこれから出会まで下って幕営し、明日北鎌尾根を登るという。あとから来た二人は最近そのルートを行ったらしく、テン場や取り付きの情報交換をしていた。そしてその二人は今日は私と同じ東鎌尾根を辿るという。

 頭の上の雲が増え、冷たい風が吹き渡るようになった。いよいよ東鎌尾根を槍ヶ岳に向かって出発。ここからが今回の未踏ルート。ひと登りで槍ヶ岳とご対面。あそこまでかあ。手前にはいくつもの小岩峰がそびえたち、一つ一つがなかなかの高度感。そして槍の頂上まではまだ600mの標高差がある。すぐに、乗越にいた二人に追いつかれ、道を譲る。結構厳しい岩稜ルートだが、それこそ「表銀座コース」と呼ばれるメジャーな縦走路。はしごや階段もよく整備されていて、不安なところはない。聳え立つ小岩峰を登りきると、真下の足元に先行者の二人が見えた。こちらを向いて写真を撮っている。50mほどを一気に下る長いはしご。下りきってふりかえって見ると、なるほど、圧巻。槍ヶ岳は次第に大きくなり、横に赤い屋根の小屋が見えてきた。目指す大槍か、とも思ったが、位置的に槍の肩の槍ヶ岳山荘が見えてきたようだ。いくつかの岩峰を越えて、水俣乗越からのタイムも2時間超え、そろそろか、と思った頃に「あと200m」のかわいい看板。次の小岩峰の登りにかかると、また男女三人組が追い付いてきた。こちらも手練れな感じ、「今日はどちらまで?」と聞かれ、「ヒュッテ大槍まで。」というと、「じゃ、もうすぐそこね。」と追い越していった。そして岩峰を登り切り、回り込むと目の前に忽然と「ヒュッテ大槍」が現れた。槍から、西岳から、見たことはあったが、想像以上に尾根の上。こんなところに・・という小屋だ。真正面には大喰岳が大きい。その奥は南岳。足元には槍沢。そして見上げる槍の穂先。すばらしいロケーション。ほぼ読み通り、3時30分に到着。それにしても、長かった、きつかった。まいりました。休憩を含めて、ちょうど10時間の行程。


 受付に中に入ると、食堂では大勢の女性が談笑中。ネットで申し込みなので、宿帳の記入もなく、「こちらの内容をご確認ください、よろしければご署名を。」で受け付け完了。夕食のみなので12500円。コーラを一本もらって、おつりなしで。「お部屋は入ってすぐの『槍沢』の1番という場所です。靴は中に棚があります。夕食は17時からのご案内になります・・・・」いくつかの説明で終了。最近の小屋はどこも若い女性が多い。こちらも多分に漏れず動き回っているのは女性ばかり(男性もいたが)

 一般室、と呼ばれる大部屋だが、仕切りなどがあって、プライバシーは保たれている、との評判だったが、行ってみるとなんと、「槍沢1番」は完全に個室。というか、もともとは物入だったのでは、と思える板に囲まれた、ちょうど一人用テントくらいのスペースの空間。「これはありがたい・・・」と独り言を言っていたら、すぐ上の部屋にいた女性と目が合ってしまい苦笑。部屋に入ってみると、周囲から聞こえてくるのは中国語?

 荷物を整理し、乾燥室はあったけれど混んでいたので自室(?)にロープを張って服を吊るし、ひと息ついていたら、もう夕食の時間。公称では定員96名となっているが、コロナ以降完全予約制となり、定員を50名程度にしているらしい。今日は夕食は2回戦とのことだったが、前半では25人ほどが食事をしていた。入り口側では女性ばかり13人の大パーティがにぎやかに。のこりはそれぞれ個別、あるいはソロの人。夕食がおいしいと定評だったが、街のカフェのランチメニューみたいなプレート。メインは「塩麹のチキングリル」コールスローが添えられているのがうれしい。黒いクッキーみたいな物体は何だ?「ひき肉のスパイスオーブン焼」なるほど。その横にキッシュみたいな物「ジャガイモのチーズガレット」そしてクラッカーにクリームチーズ添え。手前の小鉢は「もち麦のサラダ」つぶつぶ触感のもち麦とパプリカなどがフレンチドレッシング風味に。デザートにミルクプリン。グラスワインのサービスがあったが「酒を飲まないので・・」というと「ぶどうジュース」に変えてくれた。主食にはご飯と、バジル和えのパスタが置いてあったが、おなか一杯になってしまって、パスタまでは手が伸びなかった。とても美味しかったが、味の好みとしては好き嫌いが分かれるだろうな。山小屋としては珍しいのだろう。一昨年利用した、薬師沢小屋も料理に定評の小屋だったが、和食主体の食事で美味しかった。

 薬師沢小屋、といえば小屋が傾いているので有名だが、ここもなかなか。小屋全体が4度ほどかたむいているのか。廊下の柱はどう見ても平行四辺形だし、受付の窓枠には細長い三角形の板をはって、横の玄関の柱との隙間を埋めている。食事が終わり、洗顔を済ませると、もう寝るしかないと6時過ぎには横になり、そのまま午前3時まで、一度も部屋から出ることはなかった。途中何度も目が覚めたが、消灯迄の時間は女性たちの歓談の声が聞こえていたし、その後はあちこちから聞こえる寝息、いびき。昨年の白馬大池のような大惨事はなかったようだった。

 二日目に続く。